酸性化した血をきれいにする
昔のわたしは、間違いなく酸性体質でした。
たとえば瀉血(皮膚から血をとる、東洋医学の治療法)を行なうと、まっ黒で高粘度の血の塊がたくさんとれます。あきらかに酸化している。触ると指先がピリピリして、ツンとしたにおいがするのです。「金属を浸けたら、溶けるのではないか」と感じたくらいです。
とにかくアトピーの方の血液が、酸性側に傾いているのはまちがいない。いわゆる、ドロドロ血ですね。が、わたしたちの血液はつねに弱アルカリでないといけない(本当の酸性になると死んでしまう)。身体はだから、必死で中和しようとしています。
では血液が酸性化するいちばんの原因はなにか?
食事です。誤った食生活が、身体に余計で過剰な負担を強いているのです。
人間の身体は、酸性傾向でなくアルカリ傾向にあるとき、病気に対して最大限の抵抗力を発揮します。炎症は減り、皮膚のトラブルも減り、内臓の負担も軽くなる。風邪なんて寄りつきません。体内を酸性化する食べ物がいらないということではありません。酸とアルカリのバランスを正常に保つのが大切という話です。
正しい食事をすることは、病、ひいてはアトピーを癒やすのになにより大切。「高アルカリ食」によって、酸性化し汚れたドロドロ血が、きれいなサラサラの血へと蘇ります。するとたまった毒素が体外へどんどん排出されるようになるのです。尿酸などの体内毒素もアルカリの尿には溶けやすいのです。
アルカリ性食品8、酸性食品2(高アルカリ食)のバランスを守る
わたしは1日の食事の8割ほどをアルカリ性食品にするよう心掛けました。
- アルカリ性食品8割
- 酸性食品2割
本当はアルカリ性食品100%としたいところでしたが、さすがにそれは無理です。いくつかの信頼できる書物にも「慢性疾患を癒やすのに必要なのは8対2のバランス」とあったので、8対2の法則を採用することにしたのです。
アトピーや湿疹があるなら、この「8対2」の比率を頭に入れておく必要があります。いまよりアルカリ食をずっと多く食べ、酸性食をぐっと減らすのです。
現代人は大抵、その逆です。体内を酸性に傾けるものばかり飲み食いしているから、すぐに風邪をひいたり、関節が硬くなる。肌にシミができる。身体に酸毒が蔓延しすぎて、細胞が「助けて!」と悲鳴をあげているのです。
身体が酸性体質からアルカリ性体質へ変われば、驚くほどの早さで身体が反応します。関節はやわらかくなり、風邪やアレルギーはよくなり、皮膚のシミは薄くなり、色つやがめきめきよくなってきます。昔のような食生活に舞い戻らないかぎり、その状態はいつまでも続きます。
高アルカリ食の方法
以上のように、わたしたちにはどの食品がアルカリ性食品で、どの食品が酸性食品なのかをよくよく理解しておく必要があるわけです。
野菜(葉菜類、果菜類、根菜類)、果物、海藻類、きのこ類、大豆
肉類(豚肉、牛肉、鶏肉、羊肉)、魚類、卵、乳製品、穀類、砂糖
食べ物が代謝されたあとの酸度あるいはアルカリ度が、酸性食品とアルカリ性食品を区別する指標です。酸味のある果物のほとんどは、体内ではアルカリ性になります。
アルカリ性食品の摂り方
野菜や果物、それらのジュースといったアルカリ性食品は身体が消化吸収しやすいため、胃腸への負担が少ないのが利点です。そのぶん腸を休ませることができます。
野菜は、葉物野菜を多めに摂りました。キャベツ、レタス、ブロッコリー、セロリ、小松菜、ほうれん草などです。根菜類はその半分くらい。葉物より消化に負担がかかるからです。過食すると、おなかが重くなりますよね。
果物は糖分が多く、悪玉菌やカンジダを増殖させるリスクがあります。だからカンジダ症(イーストコネクション)向けの食事プログラムでは、通常NGとされています。でもわたしは食べていました。フルーツは体内を強力にアルカリ化するからです。それにおいしい(笑)。
ただしかなり控えめにしました。糖質が血糖値をあげて炎症を増悪させることも、腸内細菌のバランスに影響を与えるのも事実だからです。
食べるのは、日本で採れた、新鮮で農薬の心配のない季節の果物です。
日本人の身体にはやはり、日本で採れたものがいちばんだからです。日本には古くから「身土不二」という思想(地元の食べ物が身体にいちばんよい、という考え方)があります。これは正しい。わたしは故郷を遠く離れて暮らしていますから、生まれ育った土地の食べ物はなかなか手に入りづらい。少なくとも国内で収穫された農作物をいただくようにしています。
野菜や果物のほか、体内のアルカリ化に役立つハーブティー(どくだみ茶、柿の葉茶、ルイボスティー、カモミールティーなど)も利用しました。
腸壁の保護(スリッパリーエルム茶)、カンジダの除菌(パウダルコ茶、タヒボ、紫イペ)など、ハーブティーにはほかの働きも期待できます。
アルカリ性食品の留意点1.生野菜にゼラチンをかける
生野菜のサラダ(生菜食)は1日1回かならず食べるようにしました。
アルカリ性食品の留意点2.ナス科の野菜を減らす
野菜に食べすぎなどありません。どんどん食べるべきです。が、アトピーの方はひとつだけ注意したほうがいい種類の野菜があります。ナス科の野菜です。
ナス科野菜に含まれるたんぱく質は、小腸の消化と吸収を阻害し、さらに小腸の表面を傷つける可能性があるからです。米国のノーマン・チルダース博士(フロリダ大学食品農業科学研究所)が1993年、疫学調査によって「ナス科の植物は炎症を引きおこす」と結論づけています。
トマト、茄子、じゃがいも、ピーマン、パプリカ、唐辛子、胡椒
アルカリ性食品の留意点3.一部の野菜と果物は酸性食品
ほとんどの野菜と果物は体内でアルカリ性に変化します。が、例外があります。
野菜/とうもろこし、じゃがいも
豆類/そら豆
果物/ドライフルーツ、クランベリー、ブラックベリー、工場加工のフルーツジュース
アルカリ性食品の留意点4.食べ合わせ
自然療法の世界では、
- りんご(ジュースは除外)とメロン、バナナは、ほかの食べ物といっしょに食べない。
- かんきつ類は、穀類や乳製品といっしょに食べない。
といわれることがあります。朝食やおやつにそれだけを食べるのはいいが、食後のデザートにするのはダメ、ということです。
とくにかんきつ類は、単独で食べたときは有害なものを消してくれる半面、穀物や乳製品とともに食べると、胃酸が有害な状態に変わり、胃の消化力が落ちるとか。食べ合わせが悪いと、養分をきちんと消化吸収できないうえ、消化不良が起きます。そして最後には腸のトラブルを引きおこし、体内に毒素がたまる原因となるのだといいます。
真偽のほどは定かでありません。でも食べ合わせによって、胃がもたれたり、食道から酸味の強いおくびが出ることがあるのは経験上たしか。自然療法というのは経験の医学です。科学的な根拠は見つかっていなくても正鵠を射ていたりする。というわけで、わたしは守っています。
アルカリ性食品の留意点5.さらにアルカリ体質になる方法
最後に、さらにアルカリ体質になるための極意をいくつか紹介します。
- 野菜を生でもりもり食べる(とくに生のタマネギは浄化力満点)
- 青汁を飲む
- グリーンスムージー(小松菜、ほうれん草、セロリ、にんじんがおすすめ)を飲む
- ぬか漬けやザワークラウトを食べる
- 毎日しっかり運動する
- 便をしっかり排泄(理想は1日2回)
- クエン酸や梅干しを毎日摂る
- 絞りたてのレモンかライムの果汁を入れた水を飲む
- 顆粒状のレシチンを摂る
最後のレシチンは、頭の働きがよくなるといわれている成分。大豆由来の脂肪分です。高アルカリ性食品で、強力に身体をアルカリ化します。レモン水やライム水には血液をアルカリ化するだけでなく、体内浄化を促進する働きもあります。
ついでながら、ポジティブな感情も体内のアルカリ度を高めることがわかっています。わたしはネガティブな感情が顔を出したら、散歩やジョギングに出掛けます。あるいは映画を観たり、楽器を弾いたりして、気分転換をはかるようにしています。
酸性食品の摂り方
酸性食品の代表は、肉や魚、穀類、ナッツ類、乳製品、油、多くの加工食品などです。固くて重たくて、消化吸収がしづらいのが特徴。例外もあります。
そば、アーモンド、オリーブオイル、ココナッツオイル
酸性食品を一度にたくさん食べると、血液が酸性化し、アトピーがますます悪化していくのがわかります。アトピーに悪い食べ物です。わたしはアトピーの完治後も摂りすぎに注意しています。酸性食品は意識して摂らなくても、必要量は十分まかなえるものです。
酸性食品の留意点1.食べ合わせ
複数の酸性食品を組み合わせて食べるのは、なるべく避けます。消化器に負担をかけます。たとえば、次のようなもの。
- おにぎり、お蕎麦、芋類を同時に食べる(でんぷん質とでんぷん質)
- 肉と魚を同時に食べる(たんぱく質とたんぱく質)
- 揚げ物など、油を使った肉料理(たんぱく質と油)
- パンに市販のジャムを塗りたくる(でんぷんと砂糖)
酸性食品の留意点2.砂糖や砂糖でできた食品はNG
砂糖や、砂糖(あるいは果糖ブドウ糖液糖など)が使われている加工食品は一切口にしません。体内を思いきり酸性化させますし、体内のビタミンとミネラルを大量消費します。ろくなことがありません。
酸性食品の留意点3.禁酒する
ビールや日本酒、酎ハイ、カクテル系のアルコール飲料(砂糖入りのもの)も酸性食品です。焼酎やジン、ウォッカ、テキーラ、ウイスキーとった蒸溜酒は中性ですが、どっちにしてもお酒のアルコールは肝臓にかなり負担をかけます。
どうしても飲みたいなら、たまにグラス1杯の赤ワインを飲むくらいはOKかもしれません。赤ワインはアルカリ性食品ですし、抗酸化作用の強いポリフェノールたっぷりです。
酸性食品の留意点4.便秘を解消しておく
便秘は体内の酸性度を高めます。慢性的な便秘の場合、腸内の便をできるだけ早く排泄することがなにより大切。野菜をたくさん食べても出ていかないとき、わたしは次のような手を使いました。
- 乳酸菌を摂る
- オリゴ糖を飲む
- 浣腸
- 下剤
- リンゴダイエット
このほか、ストレスや不安、怒り、自己嫌悪、劣等感、憎しみといったマイナスの感情も、血液を酸性に傾けることがわかっています。上手に気分転換をはかります。
アトピーならとくに注意すべき食品のリスト
アトピーやアレルギーの改善のための食事法(高アルカリ食)を行なううえで注意したい(できれば食べないほうがいい)食べ物を、酸・アルカリの観点から挙げておきます。
- 牛肉、豚肉、動物性脂肪
- フライ類(天ぷら、揚げ物)
- 炒め物など、油を高温で熱したもの
- 白米、白パン、精白スパゲティ、うどん類
- 白砂糖、甘いもの、チョコレート、炭酸飲料
- 乳製品
- コーヒー、ココア、ソフトドリンク、ビール
血液が汚れていると、酸とアルカリのバランスが崩れる
「ポッテンガーの猫」で有名なフランシス・ポッテンガー博士はこんなことをいっています。
「悪血症(毒素が身体にたまっている状態)が続くと、身体の基本構造が壊れる。組織の酸・アルカリバランスが酸性に傾く。これが、毒性の症状の発生と固定化に深く関係している。このような場合、アルカリ食などで、体内にアルカリを投与することが必要だ」
ポッテンガーの猫とは
10年間、900匹のネコを追跡調査し、食事が心身に与える影響を観察。不健康なエサを食べたネコたちは2代目になると多くが病気になり、3代目では身体機能に異常があらわれたり、皮膚疾患、精神異常が急増したりしたそうです。
アトピー体質というと、現代医学ではアレルギー体質と同じ意味ですが、じつはそうではないとわたしは思う。身体が決定的な酸性化傾向にある状態ではないかと考えています。正しい食事によってアルカリ性体質をつくることの意味は、まさにこの一点にあるのです。
身体がアルカリ化すれば、自然治癒力や免疫力を最大レベルで維持していけるようになるのです。
気にしすぎるのもよくない
アルカリ体質をつくるのは、アトピーを治すうえでとても大切ですが、あまり気にしすぎるのもよくないと感じます。神経質すぎると長続きしないうえ、ストレスです。ストレスはなにより身体を酸性化させます。
アルカリ性食品8、酸性食品2のバランスはだいたいの目安、というくらいの感覚でちょうどいいと思います。厳密にやろうとすると、台所でキッチンスケールとにらめっこする羽目になりますからね。そんな必要はまったくありません。
酸性食品とアルカリ性食品がどういうものかを知っているだけで、動物性食品(肉や魚、乳製品)、甘いもの、精製穀類(白米、白小麦粉、白砂糖ほか)といった、体内で酸毒を生成しやすいものの食べすぎを自然に減らせます。これがこの記事を書いた目的なのです。
運動不足には、とくに高アルカリ食が向く
スポーツマンやガテン系の方は、食べ物の毒素(酸毒)も体内で燃やしてエネルギーに変えることができます。反対に運動不足ぎみの方は、酸毒を溜めこむばかり。そういう方は、アトピーが治ってからも高アルカリ食を意識するといいと思います。
毎日身体をしっかり動かして暮らしていれば、酸性食品とアルカリ性食品のことをさして気にする必要はないのかもしれないということです。
栄養学は、アルカリ性食品と健康との関連性を認めていない
最後にもうひとつ。
自然療法や伝統的医療、代替医療の世界では、酸とアルカリのバランスを考慮した食事が重要な役割を果たします。けれど日本の栄養学は、アルカリ性食品や酸性食品と健康状態との関連性を認めていません(個別の研究者や医師、栄養士には、アルカリ性食品の摂取をすすめる人も少なくありませんが)。
ただし海外の疫学調査などは、酸性食品が病気のリスクとなるとはっきり指摘しています。骨粗しょう症の予防としてアルカリ性食品を摂ることを推奨していたりします。
いずれにしろ、現代の栄養学者も、野菜が身体をつくり、果物が身体を浄化するという点では意見の一致を見ています。そして、ほとんどの野菜と果物はアルカリ性食品です。アルカリ性食品を多く食べると体調がすこぶるよい、というのも、わたしの実感です。