断食は腸を休ませ、粘膜修復を促す
腸を休ませるという点で、断食にまさる方法はありません。1日2食も、いうなれば半日の断食です。1日2食と少食に慣れてきたころ、1日断食に挑戦しました。破損した腸壁が修復されている、という手応えを感じました。
断食のメリット、具体的なやり方、復食の方法などをお伝えします。読み終わるころには、断食に関してひと通りの知識が身についています。
断食の必要性
現代社会は毒にまみれています。わたしたちの身体には長年にわたって、慢性的な毒素の蓄積が起きている。これがアトピーや湿疹の大きな原因です。
- 食事中の食毒(刺激性たんぱく質、農薬、GMO、食品添加物、重金属、カビなど)
- 日用品中の化学物質(洗剤やシャンプーの合成界面活性剤、殺虫剤の成分など)
- 水道水中の有害物質(塩素、トリハロメタンなど)
- 環境中の有害物質(排気ガス、カビ、ダイオキシン、ホルムアルデヒドなど)
- 医薬品の化学物質
- 代謝物、老廃物(身体には有害だから排泄される)
断食を行なうと、こうした毒素が新たに体内に侵入するのを回避できます。身体は、全エネルギーの半分ほどを奪われる「消化」という大仕事からも解放されます。その間、みずからを集中治療することができるのです。体内に蓄積した毒素をどんどん排泄し、デトックスが進みます。
ちょうどスーパーのリニューアルオープンと同じようなものです。お客が来ない数日間か数週間、店員たちは内装を変え、古いものや壊れたものを新しいものと取り替える。そして店内をピカピカに磨きあげる。同じことが断食中、わたしたちの体内で起きているのです。
断食で細胞内解毒が進む
断食にはさらに大きな利点があります。
わたしたちの身体には「自食作用」があることが近年わかってきました。細胞内のゴミをリサイクルし、エネルギーとして利用したり、新しい細胞をつくったりするメカニズムです。「細胞内解毒」と呼ばれることもあります。
アトピーの方の体内は、「ゴミ屋敷」のようなもの。言葉はよくないけれど事実です。全身の器官や細胞が老廃物や毒素にまみれています。このリサイクルシステムを活用することができれば、効率的にゴミが減らせるのではないのか、体内浄化が進むのではないか、わたしはそう考えました。
通常、身体の内部システムを、意志の力で制御することはできません。でも調べてみると、手動でスイッチをオンにする方法があったのです。
断食でした。
断食によって身体が飢餓状態に置かれると自食作用が発動することが研究で確認されていたのです。体内で栄養が枯渇し、たんぱく質が補給されない状態となると、身体には一大事。生死に関わる。そこで、腹をすかせたタコのように、自分で自分を食べるという思い切った挙に出るのです。
memo
先日、東京工業大学の大隅良典教授がノーベル賞を受賞しました。これも細胞の自食作用のメカニズムを解明したから。新聞かテレビでしばらく話題でしたから、「オートファジー」という言葉をご記憶の方もおられるはず。「オート」は「自分」、「ファジー」は「食べる」という意味。つまり「自食」。自食作用にはオートファジーのほかにも「ペルオキシソーム」などがあります。
断食の期間
わたしたちの身体は、この順番でエネルギーを使用しています。
- 食べ物
- 肝臓に蓄えたグリコーゲン
- 筋肉に蓄えたグリコーゲン
- 脂肪
- 体内の組織や器官(飢餓状態)
前のステージのエネルギーを使い切ると、次に移るというしくみです。通常はステージ4に達するのに2~3日かかるそうです。そして、ここからがほんとうの断食のスタート。ステージ5に達するには、40日くらいかかる見込み。
リサイクルシステム(自食作用、細胞内解毒)が本格始動するのはステージ5ですが、USC長寿研究所の研究者らが実施した実験では、3日以上の断食(飲み物は水だけにして、食事は1日200カロリー以下に抑える)でも免疫系の損傷の回復(免疫細胞のリサイクル)が始まる可能性があることがわかりました。
別の実験では、マウスにひと晩エサを与えないようにしたら、肝臓で自食作用がはじまったそうです。
1日断食
わたしが行なっていたのは1日断食です。
じつは一度、リサイクルシステムを十分に働かせようと5~6日の断食に挑戦したのですが、ただでさえ少食生活で痩せた身体から、わずかな脂肪も削ぎとられ、まるで敬虔なヨガ行者のようになってしまいました。
長期間の断食中はふらふらでなにも手につきません。復食(後述)にも時間をとられます。たしかに湿疹や炎症は大幅に減少し、かゆみもほぼなくなりましたが、これは現実的ではないなと判断し、その後は1日断食に戻しました。
ちなみに4日間の断食を月1回やるのと、1日断食を月4回やるのとで、効果に差はないそうです(リサイクルシステムをきちんと働かせたいなら、3日以上がいいのかもしれませんが)。
1日断食の効果
2003年の日本の研究(以下)でも、1日断食はアトピーの症状の改善に効果があるとわかっています。
被験者の女性は、IgEと好酸球数のスコアは改善しなかったそうです。食生活の改善や食物アレルギーの除去食などは行なっていなかったのでしょう。いずれにしろ、断食にアトピーを改善かする効果があるのは事実です。
断食の方法
丸1日、水だけで過ごす水断食が基本形。ほかにも野菜ジュースやすまし汁だけを飲む方法、寒天だけを食べる方法といろいろあります。どの方法を採用するにしても、水分はたっぷり摂るようにします(1日2リットル以上)。水断食は水以外飲んではいけませんが、それ以外の断食ではわたしはハーブティーを飲むこともありました。
前日の夕食は腹6分目くらいにしておかないと、断食中の空腹感が増して、かなりつらい思いをします。わたしは最初、朝昼晩とニンジンリンゴジュース(あるいは青汁)を飲むようにしていました。途中から水断食に切り替えました。断食中は身体が重く、ジュースをつくるのが億劫です。それに水断食のほうがはっきりとして効果を感じます
水断食
1日に2リットル以上の水を飲みます。ほかの断食にもいえることですが、食事からの水分摂取ができないぶん、自覚的に水分を摂取する必要があります。水断食は、断食が持つ効果を最大限に得られます。が、いきなりはつらい。最初はほかの断食法を試し、慣れてきたら水断食に切り替えるのがベターです。
ニンジンリンゴジュース断食
ニンジンリンゴジュースを朝昼晩と2杯ずつ飲みます。さらに午前中と午後、生姜紅茶を1杯ずつ飲みます。
青汁断食
ミキサーかジューサーを使って、5種類以上の野菜250グラムでつくった青汁を昼と夜に飲みます。わたしは市販の青汁を利用。楽だから(笑)。断食中は青汁でも胃への負担が大きいものです。規定の倍に薄めます。低血糖対策に、生蜂蜜30gをプラスしてもOK。
寒天断食
10グラムの寒天を540ミリリットルの水で煮ます。450凝ミリリットルまで煮つめ、生蜂蜜かオリゴ糖30グラムと、塩5グラムを溶かせば完成です。これを昼と夜、熱いまま飲むか、冷蔵庫で固めて食べます。甘味料を入れずに固め、冷やしたものに生蜂蜜やオリゴ糖をかけてもOK。空腹のつらさが緩和され、腸捻転や腸閉塞を防ぐ効果もあります。
すまし汁断食
540ミリリットルの水に、昆布と干し椎茸を10グラムずつ入れて、数時間おきます。それから火にかけ、沸騰寸前に昆布と椎茸をとりだし、醤油を30ミリリットル入れます。生蜂蜜かオリゴ糖を30グラム溶かします。これを昼夜2回、熱いうちに飲みます。断食のストレスがやわらぎ、宿便が出やすい方法です。
酵素断食
専用の酵素ドリンクを昼と夜に飲む断食で、腸内の掃除がしっかりできるとされています。甘いものが好きな方にはいいかも。「酵素ファスティング」ともいわれ、女性のモデルさんタレントさんで実践している方も多いようです。が、砂糖たっぷりですので、アトピーには不向きだと感じます。
断食の注意点
断食中のめまいやふらつき
おなかがすいた、と感じるのは、低血糖の反応です。めまいやふらつきなどの低血糖症状があらわれたときは、生蜂蜜を小さじ1杯なめるとすぐ治まります。しかしまあ、1日くらいなら食事を抜いてもどうということはありません。
体調不良の多くは、メンタルに起因しています。生まれてこの方、丸1日何も食べないなんてことはなかったので。数時間ごとに何かを口に入れて当たり前。こんなすり込みが不安を膨張させるのです。野生動物なら、丸1日食料が手に入らないことなど日常茶飯事。そして人間も昔はそうであった。
そう考えるようになったら、断食中も運動できるようになりました。といってもラジオ体操など、軽いものですが。
サプリメントは中止する
ビタミンやミネラル、乳酸菌、オメガ3などのサプリは基本的に中止します。わたしは水断食の場合はすべて服用中止。ニンジンリンゴジュースや青汁を使う日は、乳酸菌だけは服用しました。善玉菌を増やすためです。ビタミンCも飲むことがありました。
断食の好転反応
たった1日の断食であっても、好転反応が出ることがあります。わたしも症状が一時的に悪化した記憶があります。湿疹が少し固くなるとか、かゆみがちょっと増した気がするとか、比較的地味なものでした。
なかにははっきりとした好転反応を自覚される方もおられるようです。
デトックスが活発になっている証拠。身体がきちんと反応できている、ということだと思います。
断食は復食(補食)に注意
断食道場や断食病院では、3~7日間くらいの断食(もっと長いのも)を行なっているところもあります。長期間やればそれだけ効果が高いからですが、単独で行なうのは危険とされています。
断食終了後、少しずつ時間をかけて普通食に戻していくことを「復食」あるいは「補食」といいます。復食に失敗すると望むような効果が得られません。かえって胃腸を痛めてしまいます。腸捻転を起こすこともあります。
断食明けの食事は、おかゆ(数日間の断食ではおもゆ)と梅干しが推奨されています。消化器に極力負担をかけないようにするためです。
わたしは断食の翌日、朝はニンジンリンゴジュースか青汁を1杯、昼は少量のおかゆと梅干し(昆布出汁に味噌を溶いただけのお味噌汁をつけることもありました)、夜は普通食をごく軽くいただいていました。
栄養失調に効果のあった方法とは
少食生活を続けながら、たまに断食も行なっていると、栄養状態が非常に悪くなることがあります。低たんぱくの食事制限ですからね。当然です。
わたしも最初のころ、肉はおろか魚もほとんど食べていなかったので、爪先ががたがたになり、表面が剥離しはじめました。当時、ほかの病気の回復期で体重が落ちていたことや、基礎代謝がもともと高いことなど関係していると思います。
それでプロテインに頼る、という手を思いつきました。
栄養失調を自覚されたら目を通してみてください。
Prolonged Fasting Reduces IGF-1/PKA to Promote Hematopoietic-Stem-Cell-Based Regeneration and Reverse Immunosuppression. Chia-Wei Cheng, Gregor B. Adams, Laura Perin, Min Wei, Xiaoying Zhou, Ben S. Lam, Stefano Da Sacco, Mario Mirisola, David I. Quinn, Tanya B. Dorff, John J. Kopchick, Valter D. Longo
An adult with atopic dermatitis and repeated short-term fasting. Nakamura H1, Shimoji K, Kouda K, Tokunaga R, Takeuchi H.
『Fasting and Eating for Health: A Medical Doctor’s Program for Conquering Disease』Joel Fuhrman
Fasting for Health(Dr. Ben Kim)
HYGIENIC SYSTEM
『奇跡が起こる半日断食―朝食抜きで、高血圧、糖尿病、肝炎、腎炎、アトピー、リウマチがぞくぞく治っている! 』(マキノ出版) 甲田光雄・著
『マンガでわかる「西式甲田療法」―一番わかりやすい実践入門書』(マキノ出版) 甲田光雄・著