今日からできる農薬対策 ~食べ物の残留農薬は体を蝕む

農薬

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日本は世界でも指折りの農薬使用国です。食品に含まれる残留農薬はアレルギーの原因になっている可能性が高い。野菜や果物を無農薬かオーガニックに変えただけで、アトピーが治ってしまう人もいるのです。農薬のリスク、残留農薬の多い作物と少ない作物、家庭でできる農薬対策をお話しします。

日本の農薬使用量は世界屈指

日本は農薬大国です。以下はほかの国と比べて、日本ではどのくらい農薬が使われているかを図示したものです。

主要国における農薬使用量ランキング

主要国の、耕地面積あたりの農薬使用量のランキング。各国の数値は、データが存在する年次のもの(2007~2010年)を使用していますが、いまもさして変わらないでしょう。

パッと見て日本が農薬大国だとわかりますね。単位面積あたりの農薬使用量はアメリカの5倍です。

もちろんこのデータだけをもってして、日本の農作物が他国より危険と断じることはできません。農薬を一方的に「悪」と決めつけるつもりもありません。農薬のおかげで、虫害や病気などから農作物を守り安定して収穫できる、という側面があるのは事実です。

ただ、農薬がわたしたちの身体を蝕んでいるのは、昔から多くの学者が指摘してきたとおりだと思います。アレルギーなど、いろんな病気の原因になっているといわれています。とくにアトピーの方に関係するのは次のようなもの。

多少の食毒にはビクともしない身体なら、ゴシゴシ洗って食べる、という程度でいいと思います。わたしもいまはそんな感じです。それにみんなが無農薬を求めるようになったら、需給バランスが崩壊します。キャベツ1個2000円なんて状況になりかねません。

しかしひとたびアトピーを発症したなら、話は別。農薬が発症に関与している可能性があるし、少なくとも農薬は弱ったを通過して血流に侵入し、炎症やアレルギーを引きおこしているのかもしれない。

農薬と発達障害

子どもの発達障害との関連を示唆する研究もあります。2012年には米国の小児科学会が、農薬が子どもの発達障害(ADHDなど)を引きおこす危険性について公式見解を発表し、話題になりました。

これは、各国の農薬使用量と発達障害の有病率に相関関係があるという報告から。上記の農薬使用量と照らし合わせると、ある程度の相関関係があることがわかります。

各国の発達障害の有病率

参考:Elsabbagh, et al. 2012. Autisum Res

農薬とアトピー、アレルギー

以前(たぶん図書館で)読んだ本で、米国の医師が次のようなことを書いていました。要点はスマホに転記していたのですが、肝心の本のタイトルと著者をメモするのをうっかり忘れていましたので、メモのキーワードからわたしが書き起こしています。

旅行で日本に来るといつもアトピー性皮膚炎や湿疹の人の異常な多さに驚きます。日本では乳幼児の半分ほどが湿疹を経験します。中学生や高校生の症状も、アメリカよりずっと深刻です。

顔や手、腕など人目につくところにできる発疹と、それをかきむしる仕草は、本人にとってとても不快であると同時に、美観をいちじるしく損ないます。日本では全身に湿疹のある患者もよく見かけます。

しかし現在の治療はステロイド薬で症状を抑えるだけのお粗末なもの。治癒などまったく期待できない。患者はステロイド依存になって、ありとあらゆる副作用をこうむっています。

日本にアトピー性皮膚炎が増えたのは最近のことです。いったいなにが日本人を変えたのか。遺伝ではない。湿疹というのはたしかに遺伝的な部分があり、血統的に発症しやすいものですが、過去50年間のあいだに日本人の遺伝的形質が大きく変わったという裏づけはないからです。

大きく変わったのは食生活です。

日本人は昔と比べ、はるかに大量の乳製品を食べるようになりました。そうした動物性たんぱく食品が直接的に免疫系を刺激し、アレルギー反応を起こしやすい原因になっているのではないでしょうか。そうした食品には野菜という、日本人の伝統的な食べ物よりずっとたくさんの有害物質が使われています。

さらに注目すべきなのが、日本では戦後、農薬食品添加物の使用量が爆発的に増えているのです。

わたしの日本人の友人に内科医がいます。彼女の話では、無農薬や有機の食べ物にすることでアトピー性皮膚炎が劇的に治った患者が少なくないそうです。彼女の患者にはそれでステロイドと縁を切ることができた人もいるといいます。

ほかの免疫疾患と同様に、アレルギーも化学汚染されたもの食べつづけることで体内に有毒物質が溜まりすぎた結果として発症しているのではないかと考えるのに十分な材料です。

残留農薬の多い野菜、果物

農薬散布

無農薬栽培や有機栽培による野菜や果物はふつうのものよりやや高価です。入手も面倒です。すべてをそれに変えることは難しいかもしれません。

でも、とくに汚染が激しいものについて知っておくだけでも十分に意味はあります。

残留農薬が多い野菜

  • セロリ
  • ほうれん草
  • トマト、プチトマト
  • ピーマン、パプリカ
  • 唐辛子
  • ジャガイモ
  • ニンジン
  • レタス

残留農薬が多い果物

  • いちご
  • リンゴ
  • ネクタリン
  • ブドウ
  • さくらんぼ
  • ブルーベリー

残留農薬が多い穀類

家庭でできる農薬対策

よく洗うか、皮を向けば大丈夫ではないのか。そう考えるのがふつうですし、わたしも以前はそう考えていたのですが、調べてみるとそうではなかった。残念ながら、皮を向いても農薬は残っているのです。なかまで浸透している。事実、海外の環境団体などは皮を向いた状態で残留農薬検査を行なっています。

ではわたしたちになにができるのか。

1.オーガニックか無農薬の野菜、果物を選ぶ

いちばん手堅い方法です。わたし自身、アトピーが治るまでは野菜と果物、さらに穀類や加工食品もオーガニックにこだわりました。

全部が難しければ、残留農薬が多い農作物(前掲リスト)にあるものだけでもオーガニックか無農薬のものにチェンジするという手があります。あるいはリストにあるものは治るまで食べない。それだけでもかなり変わってくるはずです。

お米は毎日たくさん食べますので、玄米食の方は無農薬かオーガニックにすべきだと思います。玄米は農薬が残留しやすいからです。わが家も無条件にオーガニック(あるいは残留農薬検査を行なっているもの)を選んでいます。「減農薬玄米」も販売されていますが、毒性の強い殺虫剤などはそのまま使われていることが多いそうなので買いません。

2.よく洗う、皮をむく

洗っても皮をむいても農薬は残留する、それはそうなのですが、それでもやはり皮をむく、よく洗うということがまったく無意味なわけではありません。ある程度、農薬は落とせます。

わが家では大きなボールに重曹大さじ1杯を溶かし、そこへ野菜や果物を1~5分浸けています。重曹には強力な農薬吸着の働きがあるのです。その後、流水でしっかりと洗う。そして皮をむく。

ちなみに重曹の代わりに塩水を使うご家庭もありますが、重曹のほうが農薬除去力がずっと強い。酢水を使う方法もあると聞き試しましたが、お酢のにおいが食材にうつります……。

3.残留農薬の少ない野菜を食べる

旬の農作物は農薬使用量が比較的少ないものですから、そういうものを中心に食べる、というのもかしこい食事法です。旬の野菜は栄養分も豊富です。

以下は残留農薬が少ない野菜と果物のリストです。

残留農薬が少ない野菜

  • タマネギ
  • キャベツ
  • なすび
  • アスパラ
  • アボカド
  • とうもろこし
  • さつまいも

残留農薬が少ない果物

  • スイカ
  • メロン
  • キウイフルーツ
  • マンゴー
  • パイナップル
  • パパイヤ
  • グレープフルーツ
memo

輸入物は別です。収穫後に農薬が散布されるケースが多いからです。

さいごに

わが家にもチビが一匹棲息しているものですから、きちんと調べてみました。

アトピーが治ってからオーガニック野菜を買うのはやめていたのですが、人より敏感な体質ですし、野菜はやはり無農薬か低農薬にしたほうがいいかなあ、とあらためて思いました。味わいもまるきり違いますからね。化学肥料の野菜は栄養価も数分の1に落ちているそうです。

まあ家計に響くので、とりあえず今夜は重曹でよく洗って食べることにします(笑)。

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Pesticides are Associated with Allergic and Non-Allergic Wheeze among Male Farmers. Jane A. Hoppin, David M. Umbach, Stuart Long, Stephanie J. London, Paul K. Henneberger, Aaron Blair, Michael Alavanja, Laura E. Beane Freeman, and Dale P. Sandler
TIME「Pesticides Could Cause Unexpected Allergic Reactions」
American College of Allergy, Asthma & Immunology
農薬工業会
農林水産省「農薬」
アメリカの環境保護団体EWG
厚生労働省「食品中の残留農薬等検査結果について」(平成24年度)
厚生労働省「食品中の残留農薬等」
FDA(米国食品医薬品局)「残留農薬モニタリングプログラム」
米国小児科学会(AAP)「Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder and Urinary Metabolites of Organophosphate Pesticides」Maryse F. Bouchard, David C. Bellinger, Robert O. Wright, Marc G. Weisskopf
「Pesticide Exposure and Child Neurodevelopment」Jianghong Liu, PhD, Associate Professor and Erin Schelar, BSN, nursing student
「ATTENTION DEFICIT/HYPERACTIVITY DISORDER AND URINARY METABOLITES OF ORGANOPHOSPHATE PESTICIDES IN U.S. CHILDREN 8?15 YEARS」Maryse F. Bouchard, PhD., David C. Bellinger, PhD., Robert O. Wright, MD, MPH., and Marc G. Weisskopf, PhD.
CNN「Study: ADHD linked to pesticide exposure」
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「Global Prevalence of Autism and Other Pervasive Developmental Disorders」Mayada Elsabbagh, Gauri Divan, Yun-Joo Koh, Young Shin Kim, Shuaib Kauchali, Carlos Marcin, Cecilia Montiel-Nava, Vikram Patel, Cristiane S. Paula, Chongying Wang, Mohammad Taghi Yasamy, and Eric Fombonne