油とアトピー、アレルギーの関係
ややこしい話ですので、なるべく噛み砕いて書きます。
わたしたちのふだんの油の選び方、摂り方が悪いせいで、アトピーやアレルギーを引き起こす、あるいは増悪させているのです。
油というのは、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2つに分類されます。豊富脂肪酸は溶ける温度が高く、常温で固体。バターやラードなど、動物性の油、ココナッツオイルなどに多く含まれます。近代栄養学では悪い食べ物の代名詞です。他方、不飽和脂肪酸は低い温度でも溶け、10~20℃くらいなら液体。植物性の油に多く含まれます。
ここでまず押えたおきたいのは、動物性脂肪は消化がよくないということ。動物性脂肪を過剰摂取すると、
ということが起こります。脂肪酸の理想的な比率は、
しかしながら、じつはアトピーの方がほんとうに注目すべきなのは、植物油に多く含まれている不飽和脂肪酸です。
オメガ3系とオメガ6系(不飽和脂肪酸)の油のバランス
不飽和脂肪酸は、わたしたちの体内でつくることができる一価不飽和脂肪酸と、身体がつくれない多価不飽和脂肪酸があり、これらはさらにオメガ3系、オメガ6系、オメガ9系の3つに分類されています。
このうちオメガ3系とオメガ6系は、体内でエネルギーとして使われるほか、細胞膜などわたしたちの肉体の大切な材料にもなります。しかも体内で合成できないため、食べ物から摂取する必要があるのです。
このとき大切なのが、オメガ3系とオメガ6系の摂取量のバランス。
理想は、
1対4が理想とする説が一般的ですが、なかには1対1であるべきという専門家もいます。いずれにせよわたしたち現代人の食事では、このバランスが完全に崩れています。1対4どころか1対10、1対20という人も少なくない。オメガ3系の油がまったく不足しているのです。
このことが日本で、アトピーや花粉症といったアレルギー疾患を増加させ、あるいは悪化させる大きな原因だといわれています。
でもどうして、オメガ3系とオメガ6系のバランスが悪いと、なぜアレルギーが悪化するのか。それぞれにこんな特徴があるからです。
オメガ6系脂肪酸
オメガ6系脂肪酸は、体内の炎症を促進させます。体内で、アレルギーを起こす物質の合成量を増やします。さらに、過剰摂取すると血液がドロドロになり、動脈硬化が進行します。
オメガ6系脂肪酸の代表格は、リノール酸です。リノール酸は、サラダ油や紅花油やコーン油、ひまわり油、菜種油、大豆油、ごま油などに多く含まれています。
つまりスーパーの棚にある手ごろな油のほとんどがアトピーを悪化させるということです。もちろん飲食店の料理や、食品メーカーの加工食品に使われるのも、安価な植物油ですから、アトピーの大敵ということになります。
ちなみにリノール酸の比率があがると、殺人事件が増えることが疫学調査でわかっているそうです。反対にオメガ3系の油は、自殺やうつ病を減らすことがわかっています。
オメガ3系脂肪酸
これに対し、オメガ3系脂肪酸は炎症を抑制します。アトピーやアレルギーを鎮める働きがあるのです。さらに血液がサラサラになるという効果もあります。
身近なオメガ3系脂肪酸は、アルファリノレン酸、DHA、EPAです。アルファリノレン酸はしそ油、えごま油、亜麻仁油が多く含んでいます。DHAとEPAは魚油です。つまり青魚に多く含まれています。
アトピーなら、安価な植物油を完全に断つ
さきほどオメガ6系とオメガ3系のバランスが大切とお話ししましたが、じつはオメガ6系の脂肪酸が欠乏することはまずありません。お米や大豆、ゴマなどもリノール酸(オメガ6系)を含んでおり、ふつうに生活していれば必要量は十分に摂取できるからです。それに、オメガ6系は油としてではなく、食品中から摂取するのが望ましいとされています。
こんなわけですので、アトピーを改善させたいなら、オメガ6系の油は完全に断つべきです。
- 外食をやめる。
- 加工食品や冷凍食品をやめる。
- 揚げ物は絶対に食べない(※)。
- 自宅でもオメガ6系の油を使わない。
反対にアルファリノレン酸やDHA、EPAを多く含む油や食品は、たくさん摂りましょう。ただしアルファリノレン酸は酸化しやすいので、加熱調理(炒め物)に使うのは禁物です。
料理に使っていい油は、オリーブオイルとココナッツオイル
しそ油やえごま油、亜麻仁油(フラックスシードオイル)は、料理には不向きです。だからわが家のレシピでは、おもにオリーブオイルをメインで使用します。
オリーブオイルは、オメガ9系のオレイン酸を多く含んでいます。オレイン酸は酸化しづらいので熱に強く、動脈硬化の予防にもなります。オレイン酸含有比率の高い、エクストラバージンがおすすめです。
ココナッツオイルも積極的に使っています。
ココナッツオイルは飽和脂肪酸を85%以上含んでいますから、オリーブ油以上に安定性が高く、酸化しにくいのが特徴です。しかも、母乳に含まれるラウリン酸という成分が豊富。母乳で育った赤ちゃんが病気になりにくいのは、ラウリン酸が細菌の働きを抑え、免疫力を高める身体といわれています。
ココナッツオイルにはそのほか、抗菌性、抗ウイルス性、抗真菌性、消化器の抗炎症作用などの効果もあります。また、オメガ3系のオイルとココナッツオイルを同時に摂取することで、身体は両方を消化しやすく、利用しやすくなるそうです。効果倍増なのです。
体内に入ると、即エネルギーとして利用されるため、中性脂肪も悪玉コレステロールも増やしません。それどころか、もともとある体脂肪をいっしょに燃やしてくれる性質まであるそうです。
危険な油、トランス脂肪酸(マーガリンやショートニング)
さて、ここからは不飽和脂肪酸のバランスと同じくらい重要な話になります。高校時代の物理の先生は、ほんとうに大切なところにくると、「耳の穴かっぽじってよく聞けよ」というのが口癖でした。大声でそう前置きしたいくらいのお話なのです(笑)。
トランス脂肪酸についてです。
トランス脂肪酸は、アトピーにとってタブーのオメガ6系の油を多く含んだ、安価な植物油が原料です。そこへ水素を添加し、動物性脂肪のように常温で固体となる飽和脂肪酸に変えたものです。トランス脂肪酸をたくさん含む油には、マーガリンやショートニングなどがあります。
同じ製造方法で、油を石油に変えてつくられるのがプラスチック。マーガリンやショートニングは「食用プラスチック」といってさしつかえないと思います。事実、マーガリンを屋外に置いておいても、虫はたかりません。10年放置していても腐ることがないそうです。ゴキブリも食べないのです。そんなものは生き物の食べ物ではありませんね。
ところが恐ろしいことに、パンやお菓子、カップ麺、インスタント食品など、ありとあらゆる加工食品に使われています。最近でこそその危険性が広く知られるようになり、多少は減少気味ですが、それでもファストフード店やドーナツショップでは揚げ油に使われることも少なくありません。ファミレスの料理の多くにもトランス脂肪酸が含まれています。
トランス脂肪酸がアトピーを確実に悪化させている
トランス脂肪酸が身体に入るとどうなると思いますか?
- (代謝時)体内のビタミンとミネラルを大量に消費する。
- アレルギー促進物質を増やす。
- アレルギー抑制物質を減らす。
アトピーの炎症は目に見えて悪化していきます。
さらに、不自然で不安定な構造を持つトランス脂肪酸は、わたしたちの体細胞の細胞膜をもろくします。
トランス脂肪酸が細胞をもろくしている
わたしたちの身体は37兆個の細胞でできています。肌や筋肉、内臓、血液もすべて、細胞でできています。
脂質は、細胞一つひとつの細胞と細胞膜の材料です。細胞膜は栄養や酸素を細胞内に取り込んだり、細胞自身を外敵から守ったり、不要な老廃物や毒素を外へ排出したりとさまざまな働きがあります。トランス脂肪酸の摂取によって、この大切な細胞膜が不安定かつ脆弱になるのです。
脂質はまた、ビタミンやホルモンの材料でもあります。トランス脂肪酸があると、正常に機能しないビタミンやホルモンがつくられてしまいます。
さまざまな研究で、すでにトランス脂肪酸が多数の疾患に関わっていることが明らかになっています。
アトピー、アレルギー、カンジダ症(カンジダアレルギー、イーストアレルギー)、うつ病、心筋梗塞、脳梗塞、ガン、高血圧、肥満、糖尿病、認知症、慢性疲労など。
冷蔵庫にマーガリンがあったら、迷わず捨てましょう。
海外では、食品に含まれるトランス脂肪酸の上限値を厳格に規制している国も少なくありません。アメリカ政府も規制に前向きで、ニューヨークでは市内の飲食店での使用を全面禁止にしました。FDA(米国食品医薬品局)は2018年6月以降、トランス脂肪酸を多く含む油を原則禁止にすると発表しています。
中国でさえ食品中のトランス脂肪酸の含有量の表示を義務づけているのですが、わが国ではいまのところなんの動きもありません。
自分や家族の身は、自分の手で守る。アトピーうんぬん以前に、マーガリンやショートニングは絶対に口にすべきではないとわたしは思います。だから加工食品を買う際、わたしは原材料表示をかならずチェックします。以下のような油はトランス脂肪酸を多く含みますので、発見したら黙って棚に戻します。
なお、ファストフード店やファミレスの揚げ物も要注意。自家製のポテトフライやドーナツがサクサクしているのは揚げた直後だけですね。しばらくするとべちゃっとしてきます。それがふつう。いつまでもサクサクした食感を保っているものは間違いなくトランス脂肪酸が使われています。
農林水産省ホームページ「すぐにわかるトランス脂肪酸」
農林水産省ホームページ「脂質やトランス脂肪酸が健康に与える影響」
農林水産省ホームページ「トランス脂肪酸に関する情報」
Wikipedia「トランス脂肪酸」
厚生労働省「トランス脂肪酸に関するQ&A」
内閣府食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸」
「Association between trans fatty acid intake and 10-year risk of coronary heart disease in the Zutphen Elderly Study: a prospective population-based study」Claudia M Oomen, Marga C Ocké, Edith J M Feskens, Marie-Agnes J van Erp-Baart, Frans J Kok, Daan Kromhout
「Evaluating Acid and Base Catalysts in the Methylation of Milk and Rumen Fatty Acids with Special Emphasis on Conjugated Dienes and Total trans Fatty Acids」John K.G. Kramera, Vivek Fellnera, Michael E.R.Dugana, Frank D. Sauera, Magdi M. Mossobab, and Martin P. Yuraweczb
「Intake of trans fatty acids and risk of coronary heart disease among women 」WALTER C. WILLETT MEIR J. STAMPFER JOANN E. MANSON, GRAHAM A. COLDITZ FRANK E. SPEIZER BERNARD A. ROSNER, LAURA A. SAMPSON CHARLES H. HENNEKENS
American Heart Association
「Trans fatty acids – A risk factor for cardiovascular disease」Mohammad Perwaiz Iqbal
Food Standards Australia & New Zealand
U.S. Food and Drug Administration