前段のページではコーヒーのマイナス面(農薬とカビの汚染リスク)と、プラスの側面(心身への健康機能)をつぶさにみてきました。
今回は実践編。生豆の目利きからハンドピッキング(不良豆の除去)、焙煎、ドリップのしかたまでをしっかりと解説していきます。安全安心かつ極上のコーヒーが自宅で味わえるようになります。
正しいコーヒーの楽しみ方
手順はこう。
- 生豆を入手。
- 不良豆(欠点豆)を除去。
- 焙煎する。
- 挽く。
- 抽出(ハンドドリップ)する。
1.コーヒー豆(オーガニックの生豆)の選び方
残留農薬の心配のないオーガニック(有機JAS認定)の生豆を買います。レギュラーコーヒー(粉)や焙煎豆だと、カビが生えていてもわかりません。知らないうちにアトピーやアレルギーの症状の悪化を招きます。
思うほど高くありません。1キロで90杯くらい淹れられますから、キロ3000円なら1杯あたり33円。わが家はいつも10キロくらいまとめて買いますから、キロ1500円以下。1杯15円ほどです。
ちなみに、セブンプレミアムのレギュラーコーヒーはわたしが知るかぎりもっとも安い。400gで430円ほど。1杯あたり11円です。キーコーヒーのスペシャルブレンド缶は、近所のスーパーで340g700円。1杯20円。小川珈琲店のオーガニック有機コーヒーは170g650円。1杯38円。
どうですか。自家焙煎、家計にもやさしいでしょう?
生豆を選ぶ際、わたしはなるべく新しいものを目利きしています。生豆の状態なら3~5年は常温保存がききますから、収穫時期が2年以内のものを買っています。
産地にこだわりはありません。飲んでみないと、風味はわかりません。
新しい豆は酸味や苦みが強く、とげとげしい印象。反対に古い豆は水分がほどよく抜けていて、まったりとした味わい。でも豆本来の風味は薄くなってゆく。このあたりは肌感覚です。どのくらいの年数のものを焙煎して飲めば、自分の好みにマッチするかがそのうちわかってきます。
買った生豆の保存方法はこのとおり。
- 通気性のいい袋(紙袋がベスト)に入れる。コーヒー豆は湿気を嫌う。密封容器はNG。
- 直射日光の当たらない、風通しのいい場所に置く。
- 床から離れた、高い場所がベスト。
床に近い場所は湿気やすいです。わたしは書斎の本棚の上段に置いています。
2.ハンドピッキング――不良豆(欠点豆)を除去
焙煎前にかならず必要なのがこの作業(ハンドピッキングといいます)。産地でのスクリーニング(選別)は最低限しかなされていませんからね。
不良豆(欠点豆)を排除して、カビ毒のリスクをなくすと同時に、コーヒーの雑味やくさみをとりのぞくのも、ハンドピッキングの目的です。
とりのぞくのは、
- カビ豆
- 虫食い豆
- 欠けた豆
- 発酵した豆
- 発育不良の豆
- 死んだ豆
- 異物(古石、木ぎれ。木の皮)
- ピーベリー
最後の「ピーベリー」というのは単豆のこと。コーヒーの果実に入っている豆は通常は双子です。でもピーベリーはひとりっ子。不良豆ではありませんから、飲んでもさしつかえありません。が、焙煎の加減がほかの豆と異なります。だから別に煎ってやる必要がある。
さあて、ここからピッキングを開始!
ハンドピッキングで、10%くらいの生豆にサヨナラすることになります。生豆を1kg買ったら、飲めるのは900gということ。
3.焙煎の方法
焙煎というのは、生豆を煎る作業。青臭い生豆もこんがり焼くことで、コーヒー特有の味と香りが生まれます。
焙煎するまえに生豆を水洗いするといい、という説があります。が、どうも風味が落ちる気がするので、わたしはそのまま煎っています。
焙煎用の器具としては、専用ロースター(焙煎機)や手網(煎り網)が一般的。コーヒーショップはロースターを使いますが、これは庶民にはなかなか手が届かない。ということで、手網で焙煎してみたら、豆ガラ(チャフ)があたりに飛び散って、コンロまわりの掃除がたいへんでした。
最終的にたどりついたのはフライパンです。なんの問題もないです。
色が薄いと酸味が強く、濃くなるほどに苦みが増します。まっ黒になるまで煎れば、エスプレッソ豆。このあたりはお好みで。
1回目のパチパチを「1ハゼ」という。このあと、2回目の「2ハゼ」がくる。が、わたしはそこまではやらない。苦いから。ちなみに「3ハゼ」はない。そのまえに芯まで焦げてしまうから。
- ライトロースト……1ハゼのはじまり
- シナモンロースト……1ハゼのピーク
- ミディアムロースト……1ハゼの終わり
- ハイロースト……1ハゼの終わりと2ハゼの中間
- シティロースト……2ハゼの始まり
- フルシティロースト……2ハゼのピーク
- フレンチロースト………ハゼの終わり
- イタリアンロースト……2ハゼの終わりから炭の中間
ライトローストとシナモンローストは飲用に向かない。飲めるのは、ミディアムローストから。アメリカンコーヒーはこれ。喫茶店や市販のレギュラーコーヒーはたいていハイロースト。フルシティローストはアイスコーヒー用。フレンチローストは、カフェオレに向く。イタリアンローストはエスプレッソやカプチーノ向き。ただ苦すぎるため、最近はエスプレッソにもシティローストやフルシティローストを使うことが多い。
冷ましたら、もう一回ハンドピッキングをします。炭化したものや、十分に焙煎できていないもの、かたちのよくないものなどを捨てます。
覚えておきたいのは、焙煎後は酸化がはじまるということ。ある程度の酸化は「熟成」と呼べるもので、香りは芳醇になるし、味わいには深みがでたりもするけれど、完全に酸化したものはまずい。健康機能もそこなわれます。
おいしく飲めるのは焙煎後10日間です。一般には3日目から7日目くらいがいちばんうまいといいます。
ともあれ、コーヒー豆は煎ったら、その日から10日目までに飲みきるのが鉄則、と胸に刻みましょう。
4.焙煎したコーヒー豆を挽く
あえて説明するほどのこともないのですが、焙煎豆をそのままドリップするわけにはいきません。ミルで挽いて粉にしてやる必要があります。
焙煎豆は10日間くらいはおいしく飲めます。でも、挽いてしまうともうダメ。どんどん酸化が進む。そのまま置いておくと湿気も吸ってしまう。
コーヒーはとにかく挽きたてがいちばんうまい。飲む直前に挽くのがベストなのです。直前が面倒なら、せめて1日分を朝まとめて挽く、というふうにしましょう。
5.ハンドドリップ~極上のコーヒーの淹れ方
オーガニックの生豆をハンドピッキングし、焙煎し、挽き、ようやっと飲めるときがきました。極上のコーヒーの味と香りを堪能しましょう。
ドリップ(抽出)の際の注意点はこれだけ。
- 沸騰したら10秒待機。お湯を95度以下まで冷ます。
焙煎後3~7日目がいちばんうまいと書きましたが、焙煎したてもこれまた格別です。
思わず、んまいっ! とうめき声を洩らすほどにうまいです。
妻にレギュラーコーヒー(といっても、有機のわりと高いやつ)で淹れたコーヒーと、自家焙煎コーヒーをマスキングして飲ませ、「どっちがおいしい?」と聞きました。
迷う様子もなく自家焙煎コーヒーを指さしました。妻はふだんコーヒーを飲みません。その妻が、「ぜんぜん違う。きょうママ友と駅前の喫茶店でお茶したけど、相手にならない。同じ飲み物と思えない」とため息をついたのです。
雑味がなくて後味すっきり。でも適度な酸味と深いコク、そしてまろやかさが同居。香りからして別物です。
もう後戻りはできません。