治癒の足を引っ張る食物アレルギーに注意!

食物アレルギー

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食物アレルギーには即時型(IgE)と遅延型(IgG)があります。本当に恐いのはIgGです。食物過敏症(食物不耐症)と呼ばれるもので、発現までに数時間、遅いと数日かかることもあります。その後は数か月(最長1年)も体内で炎症を起こしつづけます。IgGが引きおこす症状や、検査の必要性についてお話しします。

食物アレルギー

卵とチーズ

アトピーの完治後も長らく遠ざけていた卵とチーズを食べる気になったいきさつは、副腎疲労の記事に書いたとおりです。

チーズに関しては、食べると翌日、お尻がむずむずするような気がしたため、そのうちやめてしまいました。ですが、卵に関してはこんな奇妙な変化が起こったのです。

  1. ある日、目玉焼き3個を食べてみた。
  2. 1日たってもなにも起こらない。
  3. 毎日、昼食に卵3個を食べるようになる。
  4. 数週間後、左の首筋がガサガサしてきた。頭が重い。
  5. かゆみはほとんどないが、首筋が熱を持っている(炎症)。
  6. 卵を中止した。
  7. 3日たっても炎症はそのまま。
  8. 4日目に少し改善。
  9. 試しに卵を3個食べた。
  10. 翌日も改善した。卵は無関係と確信。
  11. そういえば最近、胃腸に不快感がずっとあると思う。
  12. の食べ過ぎによる腸内環境の悪化が原因だと思う。
  13. 魚を食べるようにして、卵は1日1個に減らした。
  14. 炎症がとまらない。徐々に悪化していく。
  15. 本気でうろたえる。

そんなときでした。2週間前におこなった食物アレルギー検査の結果が届いたのは。

自己診断テストでグルテン過敏症の疑い濃厚となったわたしは、グルテンフリー食事(小麦を食べない食事制限)をしていました。けれど、小麦はあらゆる食品に含まれています。完全に除去するのがかなり面倒です。そこで、本当にグルテンのアレルギーなのかどうかを調べておこうと思い、血液検査に踏み切ったのでした。

遅延型アレルギーIgG検査結果

日本ではまだ一般的でない食物アレルギー(食物過敏症、食物不耐症とも)を調べるための検査。小麦グルテンだけでなく、全96種の抗原のスコアがまとめてわかります。

結果を見て、目玉が飛びだしそうになりました。卵が最強スコアを叩きだしていました。卵黄、卵白ともにです。卵ほどではありませんが、予想どおりチーズも。それからヨーグルト。ほかにも少し。

まさかのヨーグルトでした。アトピー治療のため、カスピ海ヨーグルトをあんなに食べていたのに……。特定の食品を繰り返し食べることで、過敏症を発症するケースは少なくありません。そのせいかもしれませんね。それ以前身体としたら、アトピーにいいと思っていたものに、ずっと足を引っ張られていたことになります。知らぬが仏とはまさにこのことです。

そしてまさかの小麦グルテン無反応。どうやら、あの体調不良はほかに原因があったようです。グルテン過敏症を疑ったのは、海外製のオーガニックシリアルを食べるたびに不調を感じていたからでした。とすれば、ひょっとするとカビが原因かもしれません。有機ドライフルーツは輸送過程で防カビ剤を使用しません。カビが生えることもあるようです。

さて、ここから非常に重要な話をします。ちょっと難しいかもしれませんが、必要なことだけを簡潔に書きます。

じっくりと目を通してください。

食物アレルギーには、即時型(IgE)と遅延型(IgG)がある

食物アレルギーには即時型(IgE)と遅延型(IgG)があります。日本で食物アレルギーというとIgEを指すことが多く、皮膚科で受けるアレルギー検査もIgEを対象にしています。

IgEは、数時間以内に起こる反応ですから、特定が簡単なのが特徴。卵を食べてすぐにじんましんが出たら、だれでも卵の仕業とわかります。検査などしなくてもいいくらい。

やっかいなのは、遅延型のIgGのほうです。IgGは、反応があらわれるまでに数時間~数日かかります。その後、数か月から最長1年も体内で生きつづけ、身体のあらゆる場所で慢性的な炎症や組織変性を引き起こします。

IgGによる症状は多岐に渡ります。慢性疲労、関節痛、リウマチ、偏頭痛、メニエル症候群、てんかん、自閉症、グルテン過敏症、セリアック病、過敏性大腸炎、そしてアトピー性皮膚炎。関連する症状はこの表のとおりです。

グループ

食物アレルギー(過敏症)に関連する症状

消化器系腹部痙攣、肛門掻痒、口臭、食後膨満感、胆嚢疾患、過敏性腸症候群、舌苔、便秘、下痢、胃膨満感、粘膜便、未消化便、腹痛、フタ性潰瘍、おくび、吐き気、乳児疝痛、口蓋のかゆみ、大腸炎、クローン病、発育障害、鼓腸、潰瘍性大腸炎、嘔吐
神経系攻撃的行動、精神錯乱、空想過多、集中力欠如、興奮性、精神混濁、しびれ、不明瞭な発語、不安神経症、うつ病、活動過多、無関心、学習障害、無感情、無気力、勤労に対する心構えの欠如、情動不安、どもり
筋肉骨格系関節炎、関節のうずきと痛み、変形性関節炎、成長痛、筋肉のうずきと痛み、関節リウマチ
泌尿生殖器系夜尿症、頻尿、おりもの、月経前症候群、尿意逼迫、膣のかゆみ
呼吸器系ぜん息、慢性咳、粘液過多、運動誘発性ぜん息、嗄声、持続的に鼻をほじる、再発性静脈洞炎、のどの痛み、胸部うっ血、慢性鼻づまり、運動性アナフィラキシー、吐き気、鼻の横じわ、後鼻漏、鼻水、鼻づまり
心臓血管系アンギナ、高血圧、頻脈、不整脈、動悸、血管性頭痛
外皮系にきび、ふけ、疱疹状皮膚炎、湿疹、蒼白、発疹、もろい爪や毛髪、目の下のくま、乾燥肌、じんましん、乾癬、目の下の腫れとしわ
耳と目視界不良、耳痛、耳閉感、目のかゆみ、再発性耳感染、涙目、耳だれ(耳漏)、滲出性中耳炎、難聴、メニエル症候群、耳鳴り
そのほか過食症、めまい、意識喪失感、頭部圧迫痛、頻発性夜間覚醒、吐き気、肥満、手足やかかとの腫れ、むくみ、慢性疲労、食後の過度の眠気、疲労、頭痛、不眠症、悪夢、急激な体重変化、歯ぎしり
引用元/レイモンド M.スーエン、Dr.クリス・メレティス『Are the foods you eat』:29-32,US BioTek.

どんなかたちで顕在化するかは一人ひとり異なります。その人の弱い部分にあらわれるからです。原因食物をそうとは知らずに食べつづけていると、抗体は体内でどんどん増え、免疫システムや肉体が大きなダメージを受けてしまいます。

初めのうちは症状が出なくても(反応がわずかで気づいていないだけ)、食べつづけているうちに抗体が蓄積していき、ある時期から自覚症状が出てくる、ということもあるわけです。

こんなものを自分で特定しようとしてもまず不可能です。わたしが身をもって体験ずみです。食物過敏症を正確に知るには、血液検査をおこなうほかに手はありません。

食物アレルギーのほとんどが即時型(IgE)でなく、遅延型(IgG)の仕業だということは、米国ではもはや常識だそうです。IgGによる症状は広範で、発症人数を正確につかむのは困難ですが、米国だけで5000万人、あるいはアメリカ人の50%がIgGによる食物過敏症に苦しめられている、と推測する専門家もいます。

「これら(上表)の症状に該当するものがあれば食物アレルギー検査を受けましょう。身体に誤った燃料を供給して、無意識のうちに健康を害している可能性があります」

臨床医学的検査の老舗として知られる、USバイオテック創業社長のレイモンド・スーエン氏はこう語っています。

食物アレルギーの検査と除去食

検査結果を知ったわたしは、その日から卵と乳製品の除去食に切り替えました。すぐに身体が楽になりました。胃腸の不快感が消えました。全身がふわりと軽くなり、ひさしぶりに頭がすっきりした感覚が味わいました。数週間で炎症はすっかり治まっていました。

あとから思えば、小麦を食べたときと同じ症状でした。遅延型食物アレルギーの特徴のひとつなのかもしれません。

20代後半まではなんでも好きに食べていました。なにも問題はありませんでした。卵や乳製品のアレルギーが後天的なものであることは疑う余地がありません。十数年間という長い歳月、のバリアがまともに機能していなかったせいで、抗原が体内に侵入しほうだいだった、これがアレルギーのスコアをあげた、と考えるのが妥当でしょう。その証拠に、治療期にひんぱんに食べていた生姜オートミールなどにも少し反応が出ていました。

酵母に関しては、低スコアでした。イーストコネクション(カンジダの交叉反応で起こるイーストアレルギー)は、心配していたほど進行していなかったようです。

アトピーを患っている期間が長引けば長引くほど、アレルギー反応を引き起こす食べ物が増えていき、スコアがあがっていくことは、容易に想像がつきます。この点だけをとっても、アトピーはなるべく早く治してしまうべきですね。同時に、健康な腸内環境を維持することの大切さをあらためて思い知りました。

遅延型の食物アレルギーはあらゆる不調の原因です。アトピーでなくても1度くらい調べておくと、QOL(生活の質)が向上するかもしれません。

なお、IgGはIgEなどと異なり、自然に治ってしまうことも少なくないそうです(免疫寛容という)。原因物質を半年くらい食べないようにしたら、スコアがぐんとさがった、といったこともめずらしくはありません。いつかわたしももう再検査してみたいと考えています。

難点は検査費用が高いことです。保険がきかないからです。こんなに重要な検査がどうして保険適用外なのか不思議でなりません。

さいごに

遅延型(IgG)の食物アレルギーについて知ったのはアトピーが治ってからです。でもこれ、とても重要なお話。食生活の改善にとりくんでいるが完全に治らない、グルテンフリー食や糖質制限を実践してもすっきりしない、という場合は1度、遅延型食物アレルギーを疑ってみてください。

第七章はこれで最後となります。

健康法の各ステップをこれで全部マスターしたことになります。おつかれさまでした。

まだ集中力の残っている方は、終章へと進んでください。