完治してひさしい、とある昼下がり、左手中指に虫刺されのような腫れが出現しました(写真はすでに治りかけのものです。このときは写真を撮ることなど思い浮かびませんでしたので)。
かゆみはありません。けれども、いつまでたっても治りません。やがて、偏頭痛と胃腸の不快感がやってきました。
家庭用の医学書を引っ張りだしてすみずみまで読みましたが、よくわかりません。食事が乱れていたわけでもありません。やがて、ひじの内側に大きな発疹がひとつできました。
まさか再発? しかし、発疹がそれ以上広がることはありませんでした。ただ、指とひじ裏の2か所の湿疹は癒えず、頭痛はますますひどくなり、胃腸の不調は胃酸逆流のような激しい症状に変わりました。
そんなとき、1週間ほどまえから毎日食べている海外製シリアルの箱に目がいきました。原材料表示の先頭に「Organic sprouted whole grain wheat」とあります。オーガニックの全粒小麦、という意味です。精白小麦でないから安心だ、と思って買ったのでした。
思えば、それ以前は長らく小麦食品をまともに口にしていませんでした。そのとき、読者の方からこんなメールをいただいていたことを思いだしたのです。
さて、このメールの要所は、
「時間のあるときに調べてみますね」とお返事し、そのまま忘れてしまっていたのですが、このとき、頭のなかでスイッチがカチリと入る音を聞きました。
徹底的に調べました。書籍や海外サイト(このころ日本ではグルテンのことはあまり知られていませんが、海外ではかなり研究が進んでいました)を読みあさりました。
小麦グルテンは腸粘膜を破壊する
わかったことをすべて説明しようとすると、1冊の本が書けます。ここでは当ブログ読者の方に必要な内容だけを箇条書きにします。
- 小麦グルテンは、小麦たんぱくの一種。
- このグルテンの過敏症が最近、急増中。
- 品種改良でグルテンが人体に有害となったことが原因。
- いまのグルテンは、ヒトの腸粘膜を破壊する。
- とくにグルテン過敏症の人が受けるダメージは大きい。
- 胃酸逆流はその代表的な症状。
- 糖尿病や肝臓病のほか、関連疾患は数百にものぼる。
- アトピーや皮膚疾患の発症あるいは悪化要因になる。
- 頭痛など神経障害を引き起こすこともある。
- グルテン過敏症はある日突然発症することもある。
グルテン過敏症は、グルテンの食物アレルギー
ひとことでいうと、小麦たんぱく「グルテン」のアレルギーです。グルテン過敏症の方が小麦を口にすると、下痢や腹痛、食道炎をはじめ、さまざまな不都合が生じます。アトピーやヘルペスなど、さまざま皮膚疾患を発症したり悪化させたりもします。グルテンが腸粘膜を攻撃するからです。
腸粘膜はいうまでもなく、免疫システムの中枢です。腸管関連リンパ組織(GALT)と呼ばれています。GALTは、外界と体内をへだてる防衛システムのかなめです。最前線です。ここが傷つきます。GALTが破損し、穴の開いている状態は、海外ではリーキーガットと呼ばれています。
その結果として起こる代表的な症状は胃腸障害ですが、そういうはっきりした自覚症状がないケースも少なくなく、日常の倦怠感や頭痛など小さな不調の種になっています。知らないうちにがんや糖尿病などを引き起こし、寿命を縮めているといわれています。
米国の罹患率は0.5%。軽度の罹患者も入れると、アメリカ人の20%がグルテン過敏症という説もあります。日本人の小麦消費量も相当なものです。潜在患者はかなりいるだろうと予想されています。
以上のようなことを知り、わたしはグルテン過敏症の疑いが濃厚だぞ、と感じました。そこで、「グルテンチャレンジテスト」と呼ばれる自己診断にトライしたのです。
グルテンチャレンジテストのやり方
グルテン過敏症は、食物アレルギーの一種です。治療法はありません。けれど、グルテンを完全に除去すれば、問題は解決します。過敏症かどうかは、2週間の小麦断ち(グルテンフリー食)で自己診断が可能です。
病院でも調べられます。ただし、保険適用外の検査ですので、5万円程度します。自宅でできる検査キットがあります。こちらは3万円弱。どちらも結果がわかるまでに2週間以上かかります。
というわけで、わたしはまずは「グルテンチャレンジテスト」と呼ばれる食事制限をやってみることにしました。手っとり早いし、お金もかかりません。
1.食事から小麦を完全に抜く
パンやパスタ、クッキー、パンケーキ、ラーメン、焼きそば、うどん、そうめん、そば(十割そば以外)といった小麦食品のほか、味噌(原材料に麦を使っている味噌)や醸造酢、しょうゆなどの調味料、唐揚げやフライ、てんぷら、餃子といった料理にも小麦は含まれています。
しょうゆが使えないのは厳しいので、こちらをご紹介。わたしも使っている、小麦不使用のしょうゆ。いつもまとめ買いします。普通のしょうゆのように1000ml入りを発売してほしいものです。
2.大麦やライ麦、オートミールもやめる。
グルテンやグルテンに構造の似たたんぱく質を含みます。交叉反応を起こす可能性がありますので、テスト期間中は中止します。黒パンなどのライ麦パンは中止。ビールや発泡酒といったお酒の原材料は大麦麦芽ですから、こちらもやめておきます。蒸溜酒はOKです。禁酒までは必要ありません。
3.最低2週間続ける。
グルテン過敏症は、遅延型食物アレルギーです。体内で数か月~最長1年も活動しつづけることがあります。が、半減期(半分に減るまでの期間)は20~24日。ですので、チャレンジテストは、最低2~3週間つづけることが推奨されています。
4.2週間後に小麦を食べる。
テスト期間中の2~3週間は、体調の変化をじっくりと観察します。そうして2週間後にふたたび小麦を食べます。アトピーの症状が軽くなっていたのに悪化するようなら、グルテン過敏症の可能性が高いです。グルテンフリーを実践することで、身体がぐっと楽になる可能性があります。
グルテンフリーのやり方やあると便利な食品についてはこちらの記事にまとめています。
グルテンの過敏症(アレルギー)の疑い
グルテンチャレンジテストで、わたしは自分にグルテン過敏症の疑いがあると知りました。なにしろ開始後1週間で偏頭痛も胃酸逆流もすっかり姿を消し、指の炎症も治まってしまいましたから。
2週間後に件(くだん)のシリアルを食べたら、案の定、数時間で胃酸逆流が戻ってきました。蛇足ながら、このとき、ドーナツでも味わうか、という心境になりました。小麦食品はもう2度と食べられない、ということですし、シリアルを食べてしまいましたからね。かき氷の食べおさめ、などとよくいいますが、この場合は一生分の食べおさめです。真剣味が全然ちがいます。ひと口100回くらい咀嚼しました(笑)。
グルテン過敏症をいつ発症したのかはわかりませんが、昔は毎日大量に食べていました。後天性であるのは疑う余地なしです。振り返れば、アトピー療養中もパスタをたまに食べていましたし、二八蕎麦にも小麦粉が2割含まれますから、あのころは平気だったのかもしれません。もちろん、あのころすでに過敏症で、小麦食品が快復の足を引っ張っていた可能性も否定はできません。いまとなっては、それを知る手がかりはありません。
重症のグルテン過敏症では、除去食のみで自己免疫疾患が寛解するケースもあるそうです。食生活の改善で治りきらない場合には、グルテンチャレンジテストという選択肢があることを頭の片隅に置いておいてください。
過敏症ならずとも、グルテンはわたしたちの腸壁を日々、傷つけています。せっかく腸内環境の健全化にやっきになってとりくんでいても、これではいたちごっこ。アトピー療養中の方は、治るまで小麦を断ってみるのもひとつの手かもしれませんね。
さいごに
20世紀後半の品種改良によって変質したのは、たんぱく質グルテンだけではありませんでした。小麦のでんぷんにも看過できない変化をもたらしたのです。
現代の小麦は、血糖値を異常に上昇させます。これも、アトピーの重大な悪化原因です。小麦や炭水化物全般をひかえることの利点を滔々とつづったあるグルテン関連本を読み、わたしは副腎疲労やブドウ糖代謝障害、糖質制限という食事療法の存在を知りました。
くわしいことは、この記事に書きました。グルテンチャレンジテストのついでに、ブドウ糖代謝障害の自己診断にトライしてみてもいいかもしれません。ただし、それでよくなったとしても、原因の切り分けはできません。できることなら、別々に試すのがベストだと思います。