水素水の効果は本物? 偽物?

水素水

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ちかごろ水素水がブーム。万病の元の活性酸素を減らす、とのふれこみですが、活性酸素にもいい面と悪い面があります。これを踏まえて、アトピーに効果はあるのかないのか、費用対効果はどうなのか、などをくわしく検証しています。

水素水風呂

洗顔後は化粧水代わりにパシャパシャ。水素のお風呂に漬かって、就寝前には水素入りのをがぶ飲み――。ハイ、美人の一丁できあがり、の夢をふりまいているのが、水素水。

飛ぶように売れているそうです。

水素水にははたして美容効果やアンチエイジング効果があるのかないのか。「万病のもとの活性酸素を減らしてくれる」という話は本当か。アトピーがよくなったという体験談は本物なのか。

水素水がバカ売れするのはなぜ?

この問題について、国民生活センターは先日、「あれは健康効果なんて確認されてないよ、ただの水じゃないの」と断固否定の見解を表明しました。

かと思えば、ある学者先生は「そんなことないよ。糖尿病や肝臓がんの患者さんにいい影響があったよ」と反対の結論をいったりしている。いろいろな病気の改善効果が認められるからと、一部の病院が治療にとりいれたりもしている。

ネットのクチコミなどでなく、社会的信用の比較的ある人たちが対立する意見をだしているのだけれど、それについて「いったいどっち、ハッキリしてよ」と文句をいう気はさらさらありません。わたしの水素水に対する基本姿勢は、ようするに「そんなものが必要になるような暮らしぶりをまずなんとかしないとダメ!」なのです。

なんていうと身も蓋もないのですが、ではそもそもなぜみんなが水素水にかくもコロリとまいってしまうのか、そのへんの摩訶不思議を考えてみました。

まずだれにでもわかるシンプルな購買動機。

エステやジム通いなーんて面倒なことをしなくとも、お水を変えるだけで、「ハイあなた、もう赤ちゃんのようにピチピチのお肌」、キツい食事制限なんてしなくても「ハイ、長年の持病が消えてなくなります」と夢を売られたのですから、つい財布のヒモがゆるんでしまうのは人情。

それにしても、アマゾンで人気の水素水生成器(家庭で水素水を手軽につくれる装置)は2万4000円くらい。パナソニックの「還元水素水生成器」になると10万円超え。

しかもこれでは水素の濃度がちょっと心もとないらしい。有効濃度の1ppm(理由は後述)の水素を発生させるには、30万円以上の水素水生成器が必要と聞きます。

パック中の妻「30万円ってすごいなあ」とパック中の妻にいったら、「エステ20回分くらいじゃない。飲んでみたいけどね。テレビでやってたし。流行ってるみたいだし」とあっさり返されました。

流行ってるから――。そう聞いて、ひざを打ちました。科学的根拠やら作用機序やらをきっちり調べてから判断をくだす人、わたしの周囲にはそんなにいない。とくに女子。「なんとなく健康っぽい」なんて雰囲気にとても弱い。

水素水バカ売れの真相は、そこいらにあるのかもしれません。

水素水が減らしてくれる「活性酸素」とは

でも、わたしは科学的根拠とか作用機序とかを嫌いではありません。というか、そういうものを踏まえたうえで納得してからでないと、財布のヒモは絶対にゆるめません。

というわけで、まずは活性酸素について駆け足ですがしっかりご説明。

活性酸素というのはその名のとおり、活性化された酸素。体内のたんぱく質(脂質)などと結びついて身体を錆びつかせる(酸化させる)性質がある。すると、たんぱく質や脂質の構造が変わって、本来の働きを低下させたり、異常な働きをするようになったりするわけです。

活性酸素が増えると、血液がどろどろになります。活性酸素自体も血管や皮膚などの細胞組織をいちじるしく傷つけます。肌荒れの原因にもなります。

免疫や発がん、老化とも深いかかわりがありますから、さまざまな病気の原因になったり老化が進んだりするといわれています。

水素水は活性酸素を無害化し、炎症を抑制する?

半面、有用な面もあります。体内に侵入してきた外敵を排除したり、有害な化学物質を無害化したりしてくれるのです。

ポイントは、活性酸素の量を必要レベルでキープするということ。

でもこれが、なかなかむずかしい。活性酸素は呼吸したり食事したりするだけで発生しています。紫外線を浴びたり、煙草を吸ったり、クルマの排気ガスを吸いこんだりしても発生します。ストレスも活性酸素発生の一因です。

とくにアトピーなどで全身に炎症が起きているときは、活性酸素が大量につくられています。先に書いたように、活性酸素は免疫細胞が異物を攻撃するための武器として放出するものだからです。

ここで問題なのは、ヒスタミンが活性酸素を使ってアレルギーの症状を引きおこすということ。炎症がある部位には活性酸素がたくさんあります。するとアレルギー症状がさらに加速していくというマイナススパイラルが生じる恐れがあるわけです。

してみると、活性酸素を減らせれば、アレルギー症状も軽くなるだろう、皮膚表面の炎症や湿疹も抑えられるだろう、と推測することはできます。

じつは、ひとの身体には過剰に発生した活性酸素をとりのぞく酵素があります。が、健康なひとでさえ、それでは足りないことがわかっているといいます。

そこで推奨されているのが、抗酸化作用の高い食品をたくさんとること。ビタミン類(ビタミンC、E、ベータカロテン)やポリフェノールが代表格です。

水素水に注目が集まっているのも、強力な抗酸化作用(活性酸素と結合し、水になって体外へ排泄される)があると目されているからです。

活性酸素にも役割がある

が――。

活性酸素が過剰に放出されるのにも、なにかしらワケがあるのではないかしら、とかわたしは思うのです。

炎症部位に活性酸素が過剰に存在したり、それを使ってヒスタミンが炎症を起こしたりするのは、皮膚を内側から破壊し、ゴミ(アレルゲンやカビ、ウイルス、細菌、あるいはその死骸、抗原抗原複合体など)をできるかぎり迅速に体外へ排出するためではなかろうか、と。

先述のように活性酸素は敵をやっつける実弾です。これをむりやり消し去ると、敵がのさばってしまう心配もあるような気がする。

活性酸素が病気をつくる、という話もわたしの腑には落ちません。

病気になると体内の活性酸素はかならず増えます。でもこれ、あくまで副次的な現象です。根本には、免疫システムがフル稼働せざるをえなくなったなんらかの事情――アトピーなら、腸管バリアの脆弱化による食物アレルギーなど――があるはずです。

活性酸素が増えたから病気になるのではなく、病気になったから活性酸素が増えるのではないか、ということです。そう考えると、活性酸素の多寡は健康のバロメーターといえるのかもしれません。

水素水に頼るより、アトピーの本陣を斬る

アトピーの方がまず目を向けるべきはやはり、身体が活性酸素を大量に必要としている原因。そう、炎症です。では、炎症を減らすためにどんな手を打つか、生活習慣をどう変えていくか、ということがアトピー改善のミソです。

そこを押さえないと、焼け石に水。たとえ水素水で活性酸素が大幅に減らせたとしても、体内では絶え間なく炎症が起きている――こんな状況が長期的にみていいはずがありません。

というわけで、水素水に対するわたしの見立ては、(体内の活性酸素を除去する力が本当にあるなら)アトピーの症状を軽くしてはくれるかもしれないが、対症療法のひとつ、というものです。

まあ、ものは試しといいますし、適切な食生活にシフトしたあと、軽い気持ちで利用してみる、というくらいがいいのかもしれません。

水素水を選ぶなら濃度をチェック

水素水

水素水、高いです。

きちんとした水素水生成器は先述のように30万円もします。が、調べてみたら、わりと手ごろなアルミパウチ商品(アルミでないと水素が抜けてしまう)というものがあるようです。

楽天でいま、いちばん売れているのは、1本198円のもの。水素濃度は0.8~1.2ppm。

濃度がもうちょっと高いものでは、飲料メーカー大手のものが人気。こっちは1.4ppm。1本240円。

ちなみに大気中の水素の飽和濃度は1.6ppm弱。圧力をかければ高濃度の水素水をつくることは簡単ですから、「水素濃度7ppm」なんてキャッチコピーが踊る商品もあります。でも容器のふたをとった瞬間にほとんどは大気中に流れだしてしまうようです。

水素水を選ぶ際の濃度の目安は「1ppm」だそうです。人間の身体が利用できる水素量に上限があることから、これ以上のものは摂取しても意味がないそうです。

なお、水素には人間の体内の活性酸素を無害化する力があるようですが、水素水に同じことができるのかどうか――わたしが探したところ、その科学的根拠(学術論文)はひとつも見当たりませんでした。