抗生物質は腸内細菌を殺し、アトピーを発症、悪化させる

抗生物質

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アトピーの方が抗生物質を処方されるケース、これは感染症や菌血症、敗血症を抑えるのが目的です。しかし抗生物質は腸内細菌バランスを破壊します。アトピーの症状をさらに悪化させるリスクがある。抗生物質の内服が原因でアトピーを発症した可能性すらあるのです。

抗生物質とアトピー

抗生物質

抗生物質がアトピー発症の引き金を引いた可能性がある。わたしのアトピーの原因はそこにあったのではないか。わたしは最近、そう強く疑っています。

昔からアトピー腸内細菌の関係には着目してきましたが、昨今の研究成果によって、考えていた以上に腸内最近がわたしたち人間の健康に関与していることがわかったからです。

その話をする前に、抗生物質を処方されたらどうすべきかについて、わたしなりの見解を書いておきます。

アトピーへの抗生物質の使用について

抗生物質の外用はOK

肌表面の感染症対策のため、抗生物質や抗生物質入りのステロイドが使用するケースがたまにあります。黄色ブドウ球菌が繁殖している場合などです。

基本的には消毒液(強酸性水やイソジンなど)で対処できます。あえて使う必要はないと思います。が、かりに使用しても、外用薬の場合は身体全体への影響はそれほど大きくありません。抗生剤入りステロイド(フルコートなど)については、使わないのが正解と考えます。

抗生物質の内服はNG

抗生物質の内服は、次のような場合だけにすべきだと考えています。

  • 全身レベルの重い感染症にかかった。
  • 外科手術を受けた。
  • 輸血を受けた。

日本では非常に安易に抗生物質(内服)が処方されます。

娘が風邪をひいて、高熱が数日間下がらなかったことがあります。妻に「ほかの病気だと困るからと病院に連れていって」と強めに言われ、仕方なしに小児科へ行くとやはり風邪でした。抗生剤がワンクール処方されました。驚きました。これだけ抗生物質の濫用リスクが叫ばれるようになっているのに――。

抗生物質のリスクの最たるものは、

  • 耐性菌ができる。

というものです。内服すると(外用も)その抗生物質への耐性菌が生まれることがある。すると、いざというとき効かなくなるのです。「いざというとき」というのは、先述のような場合です。

ただしわたしが抗生物質を忌避するのは、別の理由からなのです。

抗生物質がアトピーを悪化させる

ブログの読者の方とこんなやりとりをしたことがあります。

Dさん
2015年5月25日

イチローさん、こんばんは。私のアトピーですが、今月半ば頃にすっかり完治しました。

しかし1週間程前、歯を抜いた際、抗生物質を処方され、飲んでから急に体中痒くなりました。「そういえば、ここのサイトで抗生物質でアトピーが再発したなんてコメントされた方がいたような…」と思い(うろ覚えですが)飲むのを中止しました。

飲んだのは、1日(朝、昼、晩3回)分だけなのですが、日に日に炎症が出だし、未だに悪化していきます。調べたら、抗生物質は腸内の善玉菌を全て殺し、残ったカンジダ菌がアトピーをひどく悪化させるとのこと…。

せっかく治ったのに…いや、むしろ早い内に知ることができて良かったのか…なんか複雑な気持ちです(笑)。腸内環境を良くする食事法は続けているので、そのうち良くなるとは思うのですが…また時間がかかりそうです。

たった1日飲んだだけで、再発してしまうなんて恐ろしい、この体験がここにいる皆さんのお役に立つのでは?と思い、お節介にも書き込ませていただきました。

また完治目指して頑張ります。

…ハァ。

Dさん、おひさしぶりですね^^貴重な体験談、どうもありがとうございました。リスタート、大変かと思いますが、もう元へ戻す方法はわかっておられるわけですし、気を楽にしてがんばってくださいね^^

アトピーと抗生物質の関係は、わたしもかなり疑っています。というのはわたし自身、振り返ってみると最初にアトピー様の症状が出たその少し前、抗生物質を1週間ほど内服していたからです。

抗生物質はアトピーを発症させる

Dさんのおっしゃるとおり、抗生物質は腸内細菌バランスを崩壊させます。すると、とたんに腸内環境が悪化します。腸粘膜が脆弱化します。リーキーガットと呼ばれる状態に陥ります。さまざまな外敵(カビや細菌、ウイルスなど)に対して抵抗性がなくなり、いろんな食べ物に対してアレルギー反応が起きるようになります。

最近は、腸内細菌とさまざまな疾患との関連性を示唆する研究が続々出てきています。それらによれば、腸内細菌のいちばん重要な役割は、どうやら免疫の提供のようです。

わたしたちの身体は、先天的な免疫と後天的に獲得する免疫にくわえ、共生微生物による免疫によって守られています。腸内に日々侵入してくる外来の有害微生物に彼らが抵抗してくれることで、わたしたちは健康を保っていられるのです。なかにはアレルギー反応を抑制する働きを持つ菌もいることがわかってきています。

このとき大切なのは多様性です。

たとえば、いまだかつて出会ったことのない蛮族(細菌や化学物質など)が体内へ入りこんだとします。

腸内細菌たちはいつものような部隊編成で戦いに挑みます。ところが蛮族の戦い方は変則的。ふだんの戦い方がまったく通用しない。またたく間に味方がやられていく。

ところがこのとき、これまでは外敵との戦いに参加したことのない(隅っこで息を潜めてそれを眺めていた)少数の菌が敢然と立ち向かう。彼らはあっという間に蛮族をむさぼり食って数を増やし、敵を全滅させたばかりか腸内の勢力地図を一気に塗り替えてしまう――。

じつは、こうしたことがわたしたちの腸内では実際に起きているようです。

アメリカ国立衛生研究所のプロジェクト「ヒト・マイクロバイオーム計画」では、ヒトの腸内細菌が200万個のDNAを持っていることがわかりました。ヒトゲノムは2万ちょっとですから、わたしたちの身体に存在するDNAの99%は細菌のものだということです。

つまり、ヒトの免疫細胞よりずっと多様性があるわけです。それだけ外来微生物への抵抗性も高い。戦い方のバリエーションが豊富だからです。さらに腸内細菌のなかには日常口にしない食物や化学物質(添加物や農薬など)、未曾有の疫病への抵抗性を持つものもいると考えられています。

わたしたちは共生微生物の力なくしては生存不可能なのです。そして多様性と柔軟性こそが彼らの要所。これが失われると、異常事態に対処できなくなる。

抗生物質は、腸内細菌の多様性と柔軟性を破壊します。Dさんが言われるように抗生剤によるカンジダの増殖も問題です。でもそれより多様性が完全に失われること、稀少種を完全に絶滅させてしまうこと、そこへの懸念のほうがわたしにとってはずっと大きいのです。

先述しましたが、腸内細菌の中にはアレルギーを抑制するものもいます。特定の食べ物や化学物質を無害化するものもいます。そうした菌が完全に姿を消してしまったら? 治らないアトピーの根っこにあるのは、ひょっとするとそうした事態なのかもしれません。妊娠中の女性の抗生物質の服用が、赤ちゃんや子どものアトピーの原因になっている可能性を示唆する研究も出てきています。

アトピーが完治したあともいくつかの食物アレルギーは依然としてあります。食品添加物にも敏感です(加工食品やインスタント食品を食べるとすぐ気分が悪くなる)。食生活上の制約となっています。もし抗生物質内服前の腸内細菌叢が取り戻せたら? あるいは完全な健康体の方の腸内細菌叢をそのまま自分の腸内に移植できたら? 過敏症が消滅するかもしれない。そんなことを夢想することがあります。

腸内細菌叢の移植(糞便移植)、じつは海外では盛んに行なわれていて、成果をあげています(アトピーの治療でなく、腸内感染症の治療が目的ですが)。日本でも治験が始まっています。そうした治療法の有効性も含めて、今後の研究でいろいろと明らかになることを期待したいと思います。