赤ちゃん、子どものアトピー、湿疹の原因
アトピーというのは、腸内環境の変化(悪化)によって起こっています。そこに目を向けたことで、わたしのアトピーは完治しました。同じように改善、完治した人もたくさんおられます。
腸内環境とアトピーの関係は、この記事にくわしく書いています。
要点だけをまとめると、
- 腸内細菌のバランスが悪いと、悪玉菌たちが腸壁が傷つける。
- 食べ物のかけらや食毒(化学物質やカビなどの有害物質)が体内に侵入する。
- この結果、体内に炎症が起きる。
- 皮膚から悪いものが押しだされてくる(湿疹)。
- そのうち食べ物のアレルギーも発症する。
という流れ。
腸内細菌は第3の免疫系とも呼ばれています。わたしたち自身の先天的あるいは後天的な免疫システムとならんで重要な役割を果たしているのです。
腸内細菌のアンバランスが、アトピーや湿疹の原因
ここまでは大人のアトピーについてですが、子どものアトピーも基本は同じとわたしは考えています。やはり腸との関わりが深い。
これを裏づける研究報告があります。
- 生まれてから1年間のあいだに抗生物質を服用した子どもは、ぜん息の発症率が倍になる。抗生物質は子どもの湿疹にも関与している。
- 母親が妊娠前、妊娠中に抗生物質を使用した場合、どちらのケースでも生まれてきた子どもの食物アレルギーのリスクを増加させる。
抗生物質が、腸内細菌叢をかく乱することはよく知られた事実です。その結果、悪い菌が増殖する。抗生物質は、腸内環境悪化の大きなリスク因子なのです。つまりこの研究は、腸内細菌とアレルギーや湿疹とのあいだに深い関わりがあるよ、と教えてくれているわけです。
生まれたばかりの赤ちゃんの腸というのは、微生物にとっては未開の地。ヒトの身体は出生直後は無菌状態なのですが、微生物がどんどん外からやってきて陣取り合戦を始めます。そうして大人になるころには、腸粘膜の棲みつきやすい場所はどこもいろんな菌のコロニーができて、占拠されてしまうのです。
子どものアトピーが自然に治ることが多いのも、腸内環境のアンバランスが原因だったと考えると腑に落ちます。子どもの腸内細菌叢は成長過程にあり未熟なものですが、成長とともに完成していくものだからです。
外から入ってきた菌が空いている土地を埋めていく。やがて適切なバランスと多様性が確立することで、アトピーも治るということです。
腸内細菌のバランスと多様性が損なわれるというのは、わたしたちに友好的な微生物の住まいを悪い連中が地上げした(乗っとった)というようなことですからね。だから毎日がんばって乳酸菌食品を食べたり、乳酸菌サプリを飲んだりしていても、有益菌は腸に定着できずにそのまま出ていってしまう。
空いている土地がもうないからです。だから腸内環境を改善するのが困難であるし、ほうっておいても自然治癒しないのです。
湿疹が出やすい赤ちゃん、アトピーになりやすい子ども
同じ食生活をしていても、湿疹が出る子、出ない子がいるのも、やはり腸内細菌に目を向けると説明がつきます。
子どもの腸に最初に侵入するのは、母親の身体にいる微生物です。
まず出生時――。産道をくだってくる途中で、赤ちゃんは膣内にいる菌と接触します。そして分娩時にはお母さんが排便しますから、赤ちゃんはそれを浴びます。その一部は口から体内に入ります。お母さんの腸内細菌が赤ちゃんに移植されるのです。
誕生の瞬間に、わたしたちは微生物による最初の洗礼を受けるのです。
その後、今度は母乳を介して、お母さんのビフィズス菌が赤ちゃんに引き渡されることがわかっています(彼らは腸からに母乳まで旅をする!)。またスキンシップによって皮膚の常在菌が受け渡されます。キスによって口腔細菌が移動します。
そうやって、子どもの腸内細菌の基礎ができあがっていくのです。
動物が赤ちゃんをなめてきれいにするのには、じつは微生物を受け継がせる、という重要な意味があったのです。
湿疹が出やすい、あるいはアトピーになりやすい子どもは「アトピー素因がある」とか「アレルギー体質」といわれますが、それが意味するのはほんとうは腸内細菌の不完全さであって、遺伝的疾患ではない、とわたしは考えています。
わが子の湿疹やアトピーで胸を痛めている親にとって、これはきわめて重要な知識です。
腸内細菌のバランスが崩れる原因
それでは、腸内細菌のアンバランスを引きおこす原因にはどんなものがあるのか。次のような可能性が挙げられます。
- 出産前、あるいは出産時に母親が抗生物質を使用(母親の腸内細菌バランスを破壊する)
- 帝王切開(出産時の微生物の移動がない)
- 母親の腸内細菌叢がそもそもアンバランス
- 子ども自身が抗生物質を服用
④生まれて間もない時期に、抗生物質で腸内細菌バランスを乱されることで、アレルギーやぜん息を引き起こす可能性が十分ある、とする専門家がいます。腸内細菌のなかに、アレルギー反応を引きおこす免疫細胞を抑える役割を持つものがいる可能性があるからです。
赤ちゃんや子どもの湿疹、アトピー、アレルギーの背景には、こうした原因がある可能性が高いのではないか、と推測できます。
赤ちゃん、子どもの湿疹、アトピーは治る
子どもの腸内細菌は、これまでお話ししたように最初は母親から受け継がれます。でもその後は環境とのやりとりによって獲得していきます。お父さん、兄弟、おじいちゃんおばあちゃん、親戚、友だち……。発酵食品や野菜など食べ物からも体内に入ってきます。
そうして3歳までにその子どもに固有の細菌叢ができあがります。ひとりとして同じ細菌叢を持つ人はいません。これが死ぬまで続く、生き物としてのいとなみの土台となるのです。
赤ちゃんのアトピーの多くが2歳までに治る、というのは、成長とともにお腹にさまざまな種類の微生物が棲みつき、集落を形成し、腸粘膜の表面を覆いつくすことで、強固なバリアーが完成するからなのです。
もし2歳をすぎてもアトピーが治らないなら、その子の細菌叢はまだ未完成ということです。成長とともにアトピーが治る可能性はまだまだ十分にあります。そのためには腸内細菌をきちんと育てるための正しい食生活が必要です。
腸内細菌のアンバランスは、アトピーやアレルギーのみならず、胃腸疾患、自己免疫疾患、肥満の原因になっているという研究結果も見つかってきています。さらに自閉症やADHDといった発達障害、うつ、強迫神経症などとの関連も指摘されています。
さいごに
繰りかえしますけれど、子どものアトピーは成長とともに治るケースがほとんどです。
半面、現代医学による治療では治らない。現在のところアトピーの有効な治療法は見つかっていないと、皮膚科学会が明言しています。薬で治ることもありえない。医師が薬を処方するのは、あくまで症状を抑えるためです。
しかしどんな薬にも副作用はつきものです。ステロイド否定派の医師たちは、ステロイドを使うことで治りにくくなるケースが増えていると口をそろえます。ステロイドを使わないほうが改善するという臨床研究もあります。
この記事の報告を見るかぎり、薬を使う必要はないように感じます。すでに使っているケース、使わざるを得ないケースもあるかもしれません。その場合も薬に頼りきるのではなく、腸と腸内細菌を元気にする食事を心掛け、自然治癒力の働きを促進するとともに、化学物質による肌への刺激をなくしてあげることで、自然に薬がいらなくなるのではないかとわたしは思います。
Increased risk of childhood asthma from antibiotic use in early life. Kozyrskyj AL1, Ernst P, Becker AB.
Antibiotic use in infancy and symptoms of asthma, rhinoconjunctivitis, and eczema in children 6 and 7 years old: International Study of Asthma and Allergies in Childhood Phase III. Foliaki S1, Pearce N, Bjorksten B, Mallol J, Montefort S, von Mutius E; International Study of Asthma and Allergies in Childhood Phase III Study Group.
A case for antibiotic perturbation of the microbiota leading to allergy development. Lisa A Reynolds & B Brett Finlay
Mother’s and offspring’s use of antibiotics and infant allergy to cow’s milk. Metsala J, Lundqvist A, Virta LJ, Kaila M, Gissler M, Virtanen SM.