玄米は完ぺきなバランス栄養食
玄米は稲の種。水にひたせば芽を出します。生命力が宿っている。
自然療法や民間療法の世界では、生きた種をまるごと食べることをすすめています。種がもつ生命力をそのまま吸収するためです。それで、身体と精神のバランスが整うというのです。
わたしも大賛成。
白米は、精製過程でほとんどの栄養素を奪われてしまっています。ただの糖質のかたまりといっていい。
でも、玄米はちがう。
玄米と白米のちがい
米を白くすると「粕(かす)」になる。米が健康だと「糠(ぬか)」。昔のひとたちは、精白すると、大切なものが根こそぎ失われてしまうことを経験的に知っていたのでしょう。
ひと粒の玄米には、発芽に必要な栄養素がすべて詰まっています。完全栄養食なのです。
炭水化物、脂質、たんぱく質の代謝に不可欠。新陳代謝を高め、エネルギーをつくりだすのに使われます。
ビタミンB2が不足すると、皮膚細胞の再生や成長がうまくいかなくなります。ビタミンB6が不足すると、免疫システムが維持できません。皮膚炎やアレルギーを引きおこすことがわかっています。
こうしたビタミンB群は水溶性。つまり多量に摂取しても尿から排泄されてしまう。身体がストックできないので、毎日摂取する必要があるのです。
玄米の利点は、栄養素が豊富なところばかりではありません。
玄米の糖質は、白米や砂糖のように血糖値を跳ねあげたりはしません。ゆるやかに、自然に吸収されるので、とても効率のいいエネルギー源となります。代謝の際に身体に負担をかける白米とちがい、消化吸収したあとに老廃物を残していったりもしません。
毒素を排泄する力だって尋常ではない。玄米の食物繊維は善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌)を増やし、腸の掃除をしてくれますし、有毒物質を吸着し排泄してくれるフィチン酸(後述)も豊富に含んでいます。
そう、りっばなウンチが出るのです。
玄米は、体内毒素がたまりにたまったアトピーの身体を癒やしてくれるというわけです。
本当はうまい玄米
玄米はまずい、ぼそぼそしていておいしくない、という方がいます。
そんなことはないぞ、と玄米食ビギナーたるわたしなどは思うわけです。
現代人は濃い味つけ、刺激的な味に慣れてしまい、味覚がマヒしています。でも、玄米のような素朴な食べ物をいただいていると、やがて舌が敏感さをとりもどし、お米本来の甘みが感じとれるようになります。そうなると、いろんな食べ物の本来の味がわかるようになる。
もちろん好みの問題はあります。
が、玄米を上手に炊けば、白米にはない粘りとコクがあり、深い味わいを楽しめます。もっちもちで、腹もちも最高。白米の半分ほどの量で十分に満足できる、これも長所です。
無理せず小食生活をつづけられますからね。
玄米のレジスタントスターチ(βでんぷん)について
生玄米や冷や飯のでんぷん(難消化性でんぷん)が腸機能をアップさせるという報告があります。
生の玄米の主成分はβでんぷんといって、胃と腸でほとんど消化できないそうです。レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)と呼ばれ、血糖値に影響を与えにくいといいます。
しかしそれでは毒にも薬にもならないではないか、そう思われるかもしれませんが、最近の研究できちんと栄養になること、腸内環境をととのえること、腸の機能を改善することなどがわかってきています。
胃や小腸が分解できないから、大腸まで届いて善玉菌のエサになるというのです。そうして善玉菌たちがβでんぷんを分解すると、酢酸や酪酸などの短鎖脂肪酸ができる。これらが体内に吸収され、エネルギーになるのです。
しかも酢酸や酪酸が腸壁を刺激して、便通がよくなるとか。大腸がんの細胞を正常に戻す働きまであるといいます。
生米なんて食べたくない、という声が聞こえてきそうですが、ご心配なく。
玄米を炊けば、βでんぷんは消化しやすいαでんぷんに変わり、これが冷めるとαでんぷんはまたβでんぷんに戻る。つまり冷や飯を食べればいい。
note
糖尿病の方や、その前段階であるブドウ糖代謝障害の方などは、レジスタントスターチであっても血糖値が跳ねあがる、ということもあるそうです。
わが家では1日置きに3合の玄米を炊いています。ほかほかのご飯をいただいてら、夜は妻が残りをおむすびに。翌日にそれをいただく。2日に1回、レジスタントスターチを食べているわけです。たしかに家族全員、以前よりおなかの調子というか、排便の内容がぐんとよくなりました。
ここまで読んできて、玄米食をはじめてみようかしら、と思った方に向け、次の記事では玄米を食べる前にかならず知っておくべき注意点をお伝えします。
炊き方と食べ方はその先にあるので、つづけてお読みください。
この先は飛ばしていただいてOKです。個人的なよもやま話ですので。
白米と玄米
白米は、酸性食品です。
玄米は、中性にかぎりなく近い酸性食品。いや、玄米は中性食品だ、というひともいます。
とにかく、精米時に削られるさまざまなミネラル分が、米のリン酸の害を中和してくれるのです。自然のままの生きた食べ物は、自然にバランスがとれている、ということ。
いずれにしろ、玄米はアトピーの方が食事にとりいれやすい穀物といえます。
日本人には胃の弱いひとが多いそうです。酸性の白米をよく噛まずに呑みこむため、胃が酸性過多になっているためと考えられています。
ところが玄米は、白米のようにやわらかくないから自然と咀嚼回数が増え、アルカリ性のだ液がたくさん分泌されて、中和されるといいます。
白米と玄米、その是非については賛否両論あって、いまだに結論が出ていない様子ですが、わたしはどっちも好きです。
アトピー発症前の若かりしころ、バックパックを背負って、外国のある大都市を歩きまわっていたことがあります。寝ても覚めてもホットドッグばかり食べていました。
お店に入っても、どの料理も味つけが猥雑。分量は家畜のエサなみ。かといって高級レストランに入るおカネはない。そんなわたしには1個1ドルの、トマトケチャップとマスタードだけで味つけした小ぶりのホットドックがぴったりだったのです。
やがて滞在先のアパート近くの、屋台のホットドッグ屋さんと顔なじみになりました。そのおじさんがある晴れた朝、「日本人のソウルフードはおにぎりじゃないのか? 毎日毎日ホットドッグばかり食べていて飽きないのか?」と聞いてきました。
それで、わたしは無性におにぎりが食べたくなってしまった。その晩はデリでチャーハンを買いました。でも、ダメ。タイ米を化学調味料で炒めただけの代物ですから。あのおじさんを呪いました。
数日後、現地で暮らしている友人の家に行くと、なんとコシヒカリのおにぎりが出てきました(思いは叶う!)。それをほおばりながら、わたしは幸せを噛みしめました。米なしに生きていけない自分は、どうしようもなく日本人なんだなあと、はじめて自覚したような気がします。
米、万歳。
わたしたちは日本人。上手に米食を楽しみましょう。
以下の記事は、玄米で栄養失調に陥ったり、玄米でアトピーが悪化する理由についてお話ししています。
玄米食を試してみようかな、と思った方は、レシピをご一読ください。身体を傷つけない玄米の炊き方を解説しています。
「Resistant starch can improve insulin sensitivity independently of the gut microbiota.」(Bindels LB, Segura Munoz RR1, Gomes-Neto JC, Mutemberezi V, Martínez I, Salazar N, Cody EA, Quintero-Villegas MI, Kittana H, de Los Reyes-Gavilán CG, Schmaltz RJ, Muccioli GG, Walter J, Ramer-Tait AE)、「Resistant Starch Bagels Reduce Fasting and Postprandial Insulin in Adults at Risk of Type 2 Diabetes.」(Dainty SA, Klingel SL, Pilkey SE, McDonald E, McKeown B, Emes MJ, Duncan AM),「Positive effects of resistant starch supplementation on bowel function in healthy adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.」(Shen D, Bai H, Li Z, Yu Y, Zhang H, Chen L.)、「Impact of dietary resistant starch type 4 on human gut microbiota and immunometabolic functions.」(Upadhyaya B, McCormack L, Fardin-Kia AR, Juenemann R, Nichenametla S, Clapper J, Specker B, Dey M)