アトピーが重症化していたころは、バスタイムまで苦痛だったものです。水道水の塩素が傷にひりひりとしみる。血行がよくなるために、風呂あがりのかゆみは5割増し。
本来なら、ほーっと嘆息し、ひとりきりになって無防備に1日の疲れやら世塵やらを払いおとす、至極の時間のはずなのですが。そんな苦悶の時間を快適に過ごすための方法をご紹介します。
竹酢液、木酢液
「ちくさくえき」「もくさくえき」と読みます。
竹炭や木材を焼くときに出る煙を職人さんがかき集めて1年以上寝かせる。すると、これが3層に分離。上澄みを捨て、沈殿物を捨て、中間層だけをさらに精製してできるものです。
主成分は酢酸。副成分として、アルコール類やフェノール類などの有機成分が200種以上含まれています。pH値は2.5前後。酸度3.0前後。わりと強い酸性の液体です。
竹酢液と木酢液の効果
この竹酢液、木酢液には、驚くべき効果がいろいろ。まず、洗濯の柔軟剤代わりになる。それから虫よけになる。原液をコップに入れ、窓辺に置いておけば、虫は嫌がって寄ってこないし、水で薄めて肌に塗ると、手づくりの虫よけスプレーに早変わり。ほかにも生ゴミの消臭、ペットのにおい消し、のみとり……。
でも、そんなことはどうでもいい。お伝えしたいのは、竹酢液を入浴剤として使えば、つらいお風呂がヒーリングタイムになる、ということ。
竹酢液の窯元、無限窯竹さんによれば、風呂あがりの肌をつるつるにして、かゆみを減らしてくれるというのです。かゆみ対策に使えるのです。これは、竹酢液にはミネラル成分が豊富なうえ、ポリフェノールにヒスタミンの放出を抑える働きがあるからだとか。
殺菌や消毒の力が強いのも特徴。炎症を悪化させるブドウ球菌の繁殖が抑えられそうです。
海でたっぷり紫外線を浴び、全身まっ赤に日焼けしてピリピリしていた日、竹酢液を入れて半身浴をしていたら、肌の火照りがすっとひいて驚いたことがあります。
竹酢液、木酢液の使い方
浴槽にキャップ2~3杯(30~40ml)を入れます。燻煙成分のかたまりです。独特の芳香がたちのぼります。すると、脳裏に子どものころの情景がよみがえる。
田舎のじいちゃんちの風呂は昔、五右衛門風呂でした。じいちゃんと湯船につかっていると、隣の土間では、祖母が汗をかきながらせっせと薪をくべてくれている。窓の向こうから「熱くないかい?」とやさしい祖母の声。薪を燃すにおい、とてもかぐわしいものです。わたしは好きです。
娘はくさいといいます。でも、竹酢液を入浴剤として使うと、あせもがウソのように治まる。というわけで、しばらくしぶしぶ入っていたら、そのうち慣れたようです。
お湯が薄く色づきますが、浴槽に色が移るなんてことはありません。竹酢液には抗真菌作用がありますから、カビの繁殖も抑えられますね。
竹酢液と木酢液のどちらがいいのか、というご質問をいただいたことがありますが、木酢液は使われている木の種類がばらばらです。品質は竹酢液のほうが上。
クエン酸
クエン酸というのは、食べ物に含まれるすっぱい成分です。レモンやみかん、グレープフルーツ、それから梅干しなどに含まれています。
健康維持や増進のために飲む人がいます。じつは、わたしもそのひとり。
クエン酸は酸性ですが、体内では血液をアルカリ性にする「アルカリ性食品」として働きます。人間の血液は弱アルカリが望ましいのですが、現代人の多くは肉食などが原因で弱酸性に傾いています。酸性の体内の血液はどろどろ。クエン酸は、これを浄化してくれるのです。
輸血時には血液抗凝固剤(クエン酸ナトリウム)として使われているくらいですから、もともと強力な血液さらさら成分。乳酸を分解する働きもあります。筋肉痛がやわらぎ、疲れがとれるのが早くなった気がします。さらに、ミネラルの吸収をよくする「キレート作用」があります。だから、美肌や老化防止を期待して服用する人も多いのです。
アトピーの方にはとくにおすすめです。クエン酸は副腎皮質ホルモンの分泌に関係しているそうです。さらに大腸菌(悪玉菌)の殺菌もできるとか。一石二鳥ですね。
入浴剤としてのクエン酸の効果
またもや前置きが長くなってしまいました。クエン酸を入浴剤として使うと、こんなにいいことがあります。
まずはピーリング効果。角質の新陳代謝が活発になります。皮脂や汚れを溶かしだして、細胞の再生を早めてくれるそう。くわえて殺菌作用も。だから、お風呂に入るだけで、肌荒れや湿疹、にきび、しみの対策ができるのです。
使ってみればわかりますが、お湯にぬめりがあります。日光の中禅寺湖温泉のお湯みたい。風呂あがりの肌はちょいとぬるぬるします。でも、しっとりとしている。これが、保湿(乾燥対策)にいい。頭皮のフケも減った気がしました。
アトピーの症状がある場合、最初は患部がピリッとすると思います。でも、すぐに治まって、かゆみも落ちついてきます。クエン酸で皮膚は弱酸性になりますから、細菌の繁殖が抑えられます。体臭やわきが対策として利用している人もいます。
クエン酸の使い方
入浴剤として使う場合は、1回30~80gくらいを目処にします。多いほうがぬめりが強くなって、温泉気分が高まります。
飲用する場合、1日10~15gが目安。一気に飲むと体内の濃度が持続しませんから、数回に分けます。理想は2時間置き。わたしは小さじ1杯(3g)を炭酸水100mlに放りこんで、くいっと飲みほします。さっぱりしたおとなの炭酸飲料、といった味わい。粉をそのまま口に放りこんで、水で流しこむ、というのでもOK。
2リットルのペットボトルに入れておき、ちびちび飲む、という人もいます。
おしまい
入浴剤としてはエプソムソルトなども優秀ですが、竹酢液、木酢液、クエン酸の利点はとてもリーズナブルなところ。秋の夜長のバスタイムを、竹酢液とクエン酸でリラックスタイムに変えてください。