煙草はアトピーや湿疹を悪化させるのか?

煙草

この記事の重要度:

アトピーなら煙草をやめるべきか? そこに選択の余地などありません。喫煙が健康に有害だというのは、いまや普遍的事実です。これを裏づける科学的データは十分に出そろっています。犬猫の面白動画より発見しやすいくらいです。

アトピーと煙草

アトピーの方はみな、乱れた食事や運動不足、食品添加物食物アレルギー、化学物質、ハウスダストなどには気を配っていますが、どういうわけか煙草についてはそれほどは危険視していません。

とくに喫煙者のあいだでは、喫煙や受動喫煙が皮膚の状態を悪化させているとはあまり考えられていない様子。煙草を吸うと、アトピーがちょっと楽になる気がする、という人もいるくらい。でも喫煙や受動喫煙によって吸いこむ化学物質は、湿疹やアトピーの症状を増強するのに十分です。

喫煙はいくつもの健康トラブルを招いています。肺と口腔と咽(のど)のがんはその最たるもの。統計からも喫煙はその主要な原因と考えられています。日本では年間に、8万人以上が死亡しています。

がんの統計

がんの種類による死亡者数(単位・人)。肺がんによる死亡者は、胃がんについで多いのです。口腔がん、咽頭がん、喉頭がんによる死亡者は計8619人。国立がん研究センターの2016年データから。

煙草(煙草自体、巻紙、フィルター)には、燃焼時に約7000種の化学物質を生成する、600ほどの成分が含まれています。そのうち69種に発がん性があります。もちろんほかの多くの化学物質も、基本的に有害。

通常はこうした化学物質を使用する製品には警告ラベルが貼られるのですが、煙草のパッケージにはそのような警告はありません。

煙草の化学物質

たとえば煙草の煙に含まれている化学物質は、煙草以外ではこんなふうに使われています。

  • ニコチン – 農薬、殺虫剤
  • タール – 道路の舗装
  • 鉛 – 電池で使用
  • メタノール – ロケット燃料
  • カドミウム – 電池に使用される重金属
  • ナフタリン – 衣類用防虫剤の主成分
  • ヒ素 – ねずみ駆除薬
  • 酢酸 – 染毛剤
  • アンモニア – 洗剤、洗浄剤
  • ホルムアルデヒド – 工業用殺菌剤、ホルマリン
  • 一酸化炭素 – 車の排気ガス

ニコチンと皮膚疾患(アトピー、湿疹)

とりわけニコチンは、さまざまな病気を引きおこします。重度の皮膚症状の原因ともいわれています。体内でのふるまいはいろいろですが、よく知られているのは、動脈と静脈を収縮させ血流障害を引きおこすこと。動脈と静脈を収縮させ血流障害を引きおこすことがわかっています。

これは、アトピーや湿疹、そのほかすべての皮膚疾患の状態を悪化させます。

血流が悪くなると、湿疹の治癒は確実に低下します。必要な栄養が必要な場所に届かなくなりますから、損傷した皮膚の回復が遅れるのです。そのために皮膚が雑菌に感染しやすくなりますし、治ったあとも傷跡やできものが残りやすくなる。

さらに皮膚の老化を進め、たるみやしわを増やします。毒素の回収と排出も遅れます。

肺を痛めるのもかなり問題です。肺というのは、全身の細胞に酸素を届け、不要なガス(二酸化炭素)を体内から外へ運びだしているのですが、じつはこのとき体内の毒素もいっしょに排出する。そういう大切な排泄器官の働きが喫煙によって弱まるのです。デトックスを妨げ、完全にアトピーの改善を遅らせている。

たしかにニコチンにはリラクゼーション効果がありますし、集中力を高めてくれるという利点もある。が、その毒性は非常に高いということを知っておく必要があります。

注意したいのは、こうしたリスクがあるのは喫煙者だけではないということ。副流煙による受動喫煙にも、みずから煙草を吸うのとほぼ同じレベルのリスクがあるのです。

受動喫煙とアトピー

受動喫煙は、子どもにとってとくに危険です。だから世界中の飲食店や公共エリアのほとんどが禁煙を禁止しているのです。アトピーの子どもは、煙草の煙にさらされる可能性のある場所を避ける必要があります。

喫煙とアトピーの関係を調べた研究

灰皿と煙草

湿疹と煙草の関係を調べるために、喫煙者に禁煙してもらうという研究は少なくありません。そこからわかってきたのは、喫煙が湿疹の状態を悪化させているというまぎれもない事実。

2015年に、ノースウェスタン大学の皮膚科で、煙草の煙とアトピーや湿疹の関係を調べる調査が行なわれました。研究者らは26年間に68万176人を集めて、さまざまな研究を実施しました。

対象者のうち、約1割がアトピー性皮膚炎と診断されており、調査ではアトピーと喫煙(受動喫煙も含む)とのあいだに深い関わりがある可能性が高いとわかりました。

ほかの研究では、喫煙によってDNAが驚くほどのスピードで突然変異することも明らかになりました。これはがんの発生原因であるだけでなく、アトピーなどほかの病気にも関与していると見られています。免疫系の後天的な機能不全によってアトピーが引き起こされている可能性が高いということです。

さらに妊娠中の女性は、次のような理由から、いますぐ家中の煙草を捨て、煙を体内に入れないようにしたほうがいいようです。

妊娠中の喫煙が妊婦と赤ちゃんにどう影響するか

妊娠と煙草

おなかの赤ちゃんは、母親から成長に必要な栄養をもらっています。出産後も、幼児期の最初の6か月は母乳に大きく依存します。この段階では母親の食事が、とても重要。不適切な食生活、お酒、喫煙は、胎児や新生児のアレルギーやほかの病気の発症に大きく関わってきます。

実際にいくつかの研究が、妊娠期間中の喫煙が、子どものアトピーや乳児湿疹の原因になる可能性を示唆しています。たとえ本人が吸わなくても、父親や家族が吸っていれば、その副流煙もリスクを高めることが確認されています。

ある研究結果によると、幼児の湿疹発症リスクは32.7%ですが、妊娠28週と誕生28週の期間に煙草の煙にさらされた子どもは、リスクが6倍以上になることがわかったそうです。

妊娠中の喫煙はさらに、成長途上にある胎児の免疫システムを弱めます。妊娠中に煙草の煙にさらされた母親から生まれてくる赤ちゃんにアトピーや湿疹が増えるのはなぜか、そのメカニズムを解明するにはまだ研究が必要ですけれど、おそらく酸化ストレスが関係していると研究者たちは推測しています。

加熱式煙草は安全? 危険?

加熱式煙草

加熱式煙草には、いまのところ手を出さないほうが賢明です。煙草葉を見るとわかりますが、どう見ても植物の葉ではありません。茶色い人工シートです。そこへニコチンなどの化学成分がたっぷり染みこませてある。なにが添加されているかは、メーカーのみぞ知る。見知らぬ他国の営利企業をどうして信用できようか(笑)。事実、従来の煙草に含まれていない化学物質を含むという研究もあります。

タールや一酸化炭素、ホルムアルデヒドが少ないのはたしかでしょう。でも「紙巻き煙草より安全」という、メーカーの謳い文句は眉唾です。WHOやFDA(米食品医薬品局)は、「健康リスクが低減できるという証拠はない」「紙巻き煙草と同じくらい危険」といっていますが、ひょっとすると紙巻き以上に健康上のリスクは高いかもしれません。そしてそれがわかるのは数十年以上も先です。

加熱式煙草パイプやシガー(葉巻)のほうがまだマシだと思います。どちらも口腔喫煙ですからね。

さいごに

禁煙

アトピーや湿疹と喫煙との関係についてはまだまだ多くの研究が必要です。が、これまでの情報でも煙草をやめるのに十分な理由になりそうです。

アトピーや湿疹に悩んでいるのなら、そしてアトピーを完治させようと決めたのなら、いまその手に持っている1本を最後に1本にすることを強くおすすめしておきます。

その際は、ニコチンパッチやニコチンガムなどを上手に利用するといいと思います。

無糖ガム(歯科用キシリトールガム)を利用する手もあります。わたしも禁煙中、よく利用していました。1日中噛みつづけけてしまい、煙草よりコスト高でしたが、キシリトールにはカンジダを抑制する効果があることがわかっています。