眠れないから夜が怖い
アトピーの症状、とりわけかゆみがひどいころ、一晩中眠れないこともざらでした。明け方、疲れきってようやく眠りについたと思ったら、1時間後にはまたかゆみで目覚めてしまう。これが毎日。勝ち目のない消耗戦です。肉体的にも精神的にもかなりきつい。
わたしはこのブログの健康法を組み立てるちょっと前、ほかの病気で入院していました。最初はICUにいたため、夜もひっきりなしに看護師さんたちが動きまわっていました。消灯後も病室は明るいまま。眠れない、と訴えると、すぐミンザイが処方されました。
睡眠導入剤や睡眠薬はたしかに効くのです。飲むと、すとんと眠りに落ちる。かゆみがあってもなんのその。
でも常用するとすぐさま依存してしまう。わたしは入院中ずっと飲みつづけ、退院後も医師が処方をとめるのを忘れていましたから、自動的に処方箋が出されていました。
結局1か月以上、夜な夜な服用していました。
完全に依存しました。飲まないと神経が昂ぶって眠れないのです。もう立派な薬物中毒ですね。睡眠導入剤や睡眠薬はヒトの中枢神経を狂わせます。身内(親)にも鬱っぽくなって、メンタルがやられた人がいます。離脱するには、中枢神経が回復するまでの期間――つまりかなりの時間を要します。そんなときに思いだしたのが「カバカバ」でした。
というわけで、不眠対策はカバカバの紹介からスタートです。
1.カバカバ
「カバカバ」は昔から南太平洋の島々で親しまれてきた精神高揚剤です。
コショウ科の植物の根から抽出されるもので、少量の摂取で気分が晴れやかになって、落ち着いて眠ることができます。自宅療養中の身で仕事から離れているという不安が大きかったまのですが、それもいくぶんやわらぎました。
肉体に対しての作用もあり、飲むと筋肉がほぐれていくような感覚があります。酒や鎮静剤と違って、注意力や集中力が損なわれることがなく、きわだった副作用や習慣性もありません。
フィジーでは成人人口の半数がカバカバを愛用しているそうです。酒の代わりにカバカバをたしなむバーがあるくらいポピュラーなものです。10年ほど前、フィジーのある島に滞在したとき、そんなことを現地の人から聞いたのを、眠れぬ夜に思いだしたのでした。
調べてみると、日本では販売が禁止されていました。が、海外から入手できる。これで、わたしは睡眠導入剤からの離脱に成功しました。
それからも、かゆみのせいでどうしても眠れない夜は、サプリメントの「カバカバ」を1錠飲んでいました。すると、しばらくしてまぶたが重くなり、自然な眠りにつけるのです。
memo
厚労省は現在、欧米諸国においてカバカバと肝毒性との関連性を指摘する報告が複数出されているのを踏まえ、カバカバの個人輸入について、監視の徹底などを都道府県に求める旨の通知を出しています。個人使用のための個人輸入で通関拒否になるかどうかはわかりませんが、要注意。
眠れない夜のための不眠対策
ここからは手軽に実践できる不眠対策です。カバカバなどという妙なものを使わずとも、睡眠障害をやわらげることは十分に可能です。
2.水と塩
かゆみの直接の原因はヒスタミンです。このヒスタミンの産生と蓄積、そして放出は水が不足すると起きることがわかっています。反対に体内の水が十分に足りていれば、ヒスタミンの遊離が抑えられるのです(くわしくは以下の記事)。正直にいって、カバカバより効き目があるような気がします。
コップ1杯の水を飲むだけで、かゆみがすっと楽になる。塩をひとつまみ舌に落とすと、なお効果的。不眠の原因はかゆみだけではないからです。
アトピーの方は自律神経が乱れていることが多く、交感神経の昂ぶりが眠りを妨げていることが多い。塩を口に含むと、飲んだばかりの水がナトリウムをすみやかに脳へ運んでくれます。すると乱れた脳内の電気信号が整い、ストンと眠りに落ちる。あまり知られていませんが、水と塩は「天然の睡眠薬」。眠れないとき、わたしはこの手を使います。ほんとうに効果があります。
自律神経のバランスを整えるには、瞑想もとても有効です。ストレスの記事に書いていますので、ぜひご一読ください。
3.蒸しタオル(熱刺激)
かゆみを抑える方法ではありません。が、交感神経首の興奮を抑え、副交感神経優位の状態――つまり睡眠モードに身体を切り替えるのにとても有効。蒸しタオルで、ただ首を温めるだけです。それで眠れなくて悶々としていた気持ちがほぐれるのを実感できます。
リンパの流れもぐっとよくなります。毎日就寝前に行なうことで、自律神経が徐々に整い、首から上の血行も改善してきます。顔全体の火照り、赤み、かゆみもよくなることが期待できます。蒸しタオルの使い方はこちらにくわしく書きましたが、要はふつうのタオルを水で濡らして絞り、電子レンジで1分ほどチンするだけ。
ちょうどいい温度のタオルを首まわりにくるりとまいて、あとは冷めるまでそのままじっとしていればOK。やけどにはくれぐれもご注意ください。
4.ラフマ茶
ラフマ茶というのは、知る人ぞ知る健康茶。ラフマ茶に含まれる成分にセロトニン(睡眠ホルモン)の産生を促す働きがあることから、睡眠障害に悩んでいるうつ病の方によく利用されています。
わが家は緑茶よりハーブティーを飲むことが多いのですが、ラフマ茶はとくに娘のお気に入りです。クセがなくて飲みやすいこともありますが、おそらくはラフマ茶を飲むと気分が落ちつくと身体が感じとっているからでしょう。
5.睡眠サプリ
じつはカバカバ以外にも、不眠に効くというサプリはいろいろ試しました。アトピーが治ったあとの一時、不眠に悩んでいたのです。
どれもわりと高価です。5000円くらいのものから1万円近いものもあります。アトピーの不眠に効くと謳っているものもあります。どうだったか? お金が有り余っているならどうぞ、というのがわたしの答え(笑)。
6.朝決まった時間に起きる
ここからは生活習慣の話。じつはこれがとても大切。生活リズムが崩壊すると、健康な方でも不眠に悩むことになります。明け方やっと眠りについたからといって、昼過ぎまで眠るなんていうのはナンセンスです。その夜、眠れなくて当然。そういう方には、不眠症を名乗る資格はありません。
朝はかならず定時に起きる。できれば7時。これが基本中の基本です。そして午前中はどんな眠くても横にならない。昼食後に1時間程度の昼寝をするくらいはOKだと思います。
7.日中に日光をしっかり浴びる
アトピーが悪化すると、外出がおっくうで、休日などは1日中家の中にとじこもっているという方も少なくありません。でもこれ、不眠の最大の原因。朝起きたらすぐ日光を浴びて、身体に朝がきたことを教えてやる必要があります。毎日続けることで、リズムが整ってきます。
8.昼間、身体をしっかり動かす(運動する)
運動不足も不眠を助長します。肉体的に十分に疲れていれば、ほうっておいては人間は眠ってしまいます。
9.就寝前の1時間はスマホやPCの画面を見ない
スマホやパソコンのLED画面から出ている強い光(ブルーライト)が睡眠を阻害することはよく知られていますね。メラトニンの生成を妨げるからです。
メラトニンもセロトニンとならんで、睡眠に大切なホルモン。覚醒と睡眠を切り替え、自然な眠りを誘う働きを持っています。就寝前はスマホもタブレットもパソコンも、もちろんテレビも遠ざけて、音楽を聴いたり読書をしたりしてリラックスしましょう。いまが夜なら、このページをすぐに閉じてください。また明日、お会いしましょう。
さいごに
眠れない日が続いているうちは、アトピーもなかなか改善しません。腸壁の傷がなかなか回復しませんし、副腎の機能も低下するからです。もっとも、ちゃんと眠れないと治らないということはありません。ご心配なく。治ってくれば自然に眠れるようになりますよ。
Harvard University
National Sleep Foundation
Medically reviewed by Peter O’Connor, MD; American Board of Otolaryngology with subspecialty in Sleep Medicine
eMedicine.com. Insomnia.
FDA.gov. Medication Guide Intermezzo.